2017年04月22日

日米で同時取材制限進む、経産省全室施錠、質問する記者に出ていけ、ホワイトハウスとメディア鋭く対立、アメリカで力ます、信頼できる報道

1704 記者締め出しIMG_3405.JPG1704 記者今村IMG_3406.JPG1704 記者ホワイトハウスIMG_3412.JPG1704 記者WPOSTIMG_3409.JPG1704 記者CNNIMG_3411.JPG
 経済産業省、記者入室シャットアウト
 2月27日から、経済産業省は全執務室に鍵をかけ、新聞記者など外部の人間が入室できない措置を取った。同省はこの日から、取材の場所や対応する職員を限定するなどのルールを定め、全職員に通知した。取材に対応するのは管理職以上、メモを取る職員を同席させ、取材のやり取りを広報室に報告するように求めている。また幹部が自宅周辺で取材に応じることも原則禁止、やむをえず応対した場合は、広報室に報告するように求めている。
 この事態に対し、元共同通信記者、同志社大学社会学部の小倉純教授は「省庁が持つ情報は国民の財産であり、官僚が独占し、密室で扱ってよいというものではない。役所の都合のいいことだけ報じればいいというのは、情報公開に逆行する」(2/26毎日新聞)と語った。
 これに先立つ2月10日、日米会談に関する経産省作成の資料の一部がメディアで報道され、「情報漏れ」が経産省内で問題となったため、急きょ新ルールがきめられたようだ。

 質問する記者に「うるさい、出ていけ」、今村復興相
 この報道がまだ冷めやらぬ4月4日、今度は今村復興大臣が記者会見の質問に激高し、「うるさい、出ていけ」と怒鳴る事件が起きた。
 質問した記者は、避難解除にあたって、約26,000人の自主避難者は家賃補助も打ち切られている。補償金の対象にもなっていないため、国はそれらの人々にどのような責任をとるのか問いかけたものだ。それに対して復興相は「帰るか帰らないは本人の責任と判断だ」と返答、さらに国の責任を問う記者に対し、「撤回しろ、出ていけ、二度と来るな」など激高して会見室から出て行ってしまった。
 質問した記者はこれまで一貫して原発被害を取材している中西誠一郎氏(フリーランス)。中西記者によると、復興省の今回の会見は質問のないまま終わりそうになったので、手を挙げたのだという。被災地が避難解除となっても、多くの被災者は地元に帰らない人が多い。特に補償もないまま住宅補助が打ち切られ、帰るという選択もできない、自主避難者は放置されたままだ。避難地域解除にあたっての、政府の手厚い対応が必要とされるのに、「本人の責任と判断だ」と突き放す復興省の態度は、追及されて当然だろう。
 
 CNNをインチキニュース呼ばわり、就任式の参加者数、史上最大?
 ところでアメリカでも記者会見で日本と同じ現象が起きている。アメリカの場合は主要メディアとトランプ政権が鋭く対立としていると伝えられている。就任直前の記者会見で発言を求めたCNNの記者に対して、トランプ大統領は「CNNはインチキニュースを流す、質問させない」と拒み通した。ロシアがトランプ大統領の弱みをにぎってアメリカ政治に介入してきた可能性があるとの報道が原因だった。
1月20日の就任式をめぐっては、メディアが「議事堂前に集まった市民の数は25〜30万人、8年前オバマ前大統領の時の参加者180万人に比べるとかなり少ない」と報じたことに対し、トランプ陣営は、参加者数は最大だったと言い張り、ケリーアン・コンウエイ補佐官は、メディアが空撮映像を示して誤りをただしたのに対し、「われわれが主張するのは、もう一つの真実だ」と答えた。こうした態度が一連の「フェイクニュース」の元凶だといえる。

 批判的報道10社を締め出し
 制裁問題についてロシアの駐米大使と話し合ったことが明るみに出たフリン補佐官が辞任した際も、大統領は一連のメディア報道を「フェイク(偽)」だと記者会見で述べた。メディアの側が「この情報は政権内部から漏れたものだ」と事実であることを主張したのに対し、大統領自身は「リークは事実だがニュースはフェイクだ」(2/16の大統領会見)と主張した。
 就任以来メディアとの確執は続いているが、スパイサー報道官は10社をホワイトハウス会見から締め出した(2/24)。排除された社は、ニューヨーク・タイムズ、ロサンゼルス・タイムズ、ニューヨーク・デイリーメール、英国デイリーメール、CNN、英国BBCニュース、ポリティコ、ザ・ヒル、バズフィード、ハフィントンポスト、いずれもトランプ政権に批判的メディアである。AP通信とタイム誌は抗議の意味を込めて出席を断った。

 「信頼できる」ニュース、NYタイムズ購読者急増
 1月8日、ゴールデングローブ賞授賞式でトランプ氏の言動を「差別的だ」として批判した女優メリル・ストリープは発言の最後を次のように締めくくった。
 「抗議の怒りがあるとき、信念を持ち、声を上げる報道機関が必要です。前に進むためには報道が必要だし、真実を守るために我々が必要なのです」。
 一部、トランプ大統領に迎合するメディアもあるが、CNNはもとより、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ロサンゼルス・タイムズ、CBSニュース、ABCニュースなど基幹メディアは、トランプ政権に鋭い批判の矢を放し続けている。
 そして市民はこの呼びかけに反応している。ニューヨーク・タイムズの購読者は選挙後1週間で4万部増、その前後3か月でウエブ有料購読が27万件増えた。ニューヨーク・タイムズは「信頼できるニュースを読者が求めている」と語っている。

 ワシントン・ポスト、トランプ調査報道にピュリツァー賞
4月10日発表された今年のピュリツァー賞には、国内報道部門ではワシントン・ポスト紙のデービッド・ファレンソルド記者が受賞した。選挙期間中、一貫して共和党候補、トランプ氏への調査報道を徹底したことが評価された。ファレンソルド記者がとりわけ力を注いだのは、「トランプ財団」への献金が個人的に流用された事実を追跡することで、ツイッターで取材経過を公開しながら、幅広く情報提供を募るという手法も評価された。
 解説報道部門の受賞は「パナマ文書」の実態を明らかにした「国際調査報道ジャーナリスト連合ICIJ」に与えられた。
 調査報道を貫く姿勢によって、アメリカの基幹メディアが、読者、視聴者の信頼回復を成し遂げていることに注目したい。



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2017年04月12日

日米で同時取材制限進む、経産省全室施錠、質問する記者に出ていけ、ホワイトハウスとメディア鋭く対立、アメリカで力ます、信頼できる報道

1704 記者締め出しIMG_3405.JPG1704 記者今村IMG_3406.JPG1704 記者ホワイトハウスIMG_3412.JPG1704 記者WPOSTIMG_3409.JPG1704 記者CNNIMG_3411.JPG
 経済産業省、記者入室シャットアウト
 2月27日から、経済産業省は全執務室に鍵をかけ、新聞記者など外部の人間が入室できない措置を取った。同省はこの日から、取材の場所や対応する職員を限定するなどのルールを定め、全職員に通知した。取材に対応するのは管理職以上、メモを取る職員を同席させ、取材のやり取りを広報室に報告するように求めている。また幹部が自宅周辺で取材に応じることも原則禁止、やむをえず応対した場合は、広報室に報告するように求めている。
 この事態に対し、元共同通信記者、同志社大学社会学部の小倉純教授は「省庁が持つ情報は国民の財産であり、官僚が独占し、密室で扱ってよいというものではない。役所の都合のいいことだけ報じればいいというのは、情報公開に逆行する」(2/26毎日新聞)と語った。
 これに先立つ2月10日、日米会談に関する経産省作成の資料の一部がメディアで報道され、「情報漏れ」が経産省内で問題となったため、急きょ新ルールがきめられたようだ。

 質問する記者に「うるさい、出ていけ」、今村復興相
 この報道がまだ冷めやらぬ4月4日、今度は今村復興大臣が記者会見の質問に激高し、「うるさい、出ていけ」と怒鳴る事件が起きた。
 質問した記者は、避難解除にあたって、約26,000人の自主避難者は家賃補助も打ち切られている。補償金の対象にもなっていないため、国はそれらの人々にどのような責任をとるのか問いかけたものだ。それに対して復興相は「帰るか帰らないは本人の責任と判断だ」と返答、さらに国の責任を問う記者に対し、「撤回しろ、出ていけ、二度と来るな」など激高して会見室から出て行ってしまった。
 質問した記者はこれまで一貫して原発被害を取材している中西誠一郎氏(フリーランス)。中西記者によると、復興省の今回の会見は質問のないまま終わりそうになったので、手を挙げたのだという。被災地が避難解除となっても、多くの被災者は地元に帰らない人が多い。特に補償もないまま住宅補助が打ち切られ、帰るという選択もできない、自主避難者は放置されたままだ。避難地域解除にあたっての、政府の手厚い対応が必要とされるのに、「本人の責任と判断だ」と突き放す復興省の態度は、追及されて当然だろう。
 
 CNNをインチキニュース呼ばわり、就任式の参加者数、史上最大?
 ところでアメリカでも記者会見で日本と同じ現象が起きている。アメリカの場合は主要メディアとトランプ政権が鋭く対立としていると伝えられている。就任直前の記者会見で発言を求めたCNNの記者に対して、トランプ大統領は「CNNはインチキニュースを流す、質問させない」と拒み通した。ロシアがトランプ大統領の弱みをにぎってアメリカ政治に介入してきた可能性があるとの報道が原因だった。
1月20日の就任式をめぐっては、メディアが「議事堂前に集まった市民の数は25〜30万人、8年前オバマ前大統領の時の参加者180万人に比べるとかなり少ない」と報じたことに対し、トランプ陣営は、参加者数は最大だったと言い張り、ケリーアン・コンウエイ補佐官は、メディアが空撮映像を示して誤りをただしたのに対し、「われわれが主張するのは、もう一つの真実だ」と答えた。こうした態度が一連の「フェイクニュース」の元凶だといえる。

 批判的報道10社を締め出し
 制裁問題についてロシアの駐米大使と話し合ったことが明るみに出たフリン補佐官が辞任した際も、大統領は一連のメディア報道を「フェイク(偽)」だと記者会見で述べた。メディアの側が「この情報は政権内部から漏れたものだ」と事実であることを主張したのに対し、大統領自身は「リークは事実だがニュースはフェイクだ」(2/16の大統領会見)と主張した。
 就任以来メディアとの確執は続いているが、スパイサー報道官は10社をホワイトハウス会見から締め出した(2/24)。排除された社は、ニューヨーク・タイムズ、ロサンゼルス・タイムズ、ニューヨーク・デイリーメール、英国デイリーメール、CNN、英国BBCニュース、ポリティコ、ザ・ヒル、バズフィード、ハフィントンポスト、いずれもトランプ政権に批判的メディアである。AP通信とタイム誌は抗議の意味を込めて出席を断った。

 「信頼できる」ニュース、NYタイムズ購読者急増
 1月8日、ゴールデングローブ賞授賞式でトランプ氏の言動を「差別的だ」として批判した女優メリル・ストリープは発言の最後を次のように締めくくった。
 「抗議の怒りがあるとき、信念を持ち、声を上げる報道機関が必要です。前に進むためには報道が必要だし、真実を守るために我々が必要なのです」。
 一部、トランプ大統領に迎合するメディアもあるが、CNNはもとより、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ロサンゼルス・タイムズ、CBSニュース、ABCニュースなど基幹メディアは、トランプ政権に鋭い批判の矢を放し続けている。
 そして市民はこの呼びかけに反応している。ニューヨーク・タイムズの購読者は選挙後1週間で4万部増、その前後3か月でウエブ有料購読が27万件増えた。ニューヨーク・タイムズは「信頼できるニュースを読者が求めている」と語っている。

 ワシントン・ポスト、トランプ調査報道にピュリツァー賞
4月10日発表された今年のピュリツァー賞には、国内報道部門ではワシントン・ポスト紙のデービッド・ファレンソルド記者が受賞した。選挙期間中、一貫して共和党候補、トランプ氏への調査報道を徹底したことが評価された。ファレンソルド記者がとりわけ力を注いだのは、「トランプ財団」への献金が個人的に流用された事実を追跡することで、ツイッターで取材経過を公開しながら、幅広く情報提供を募るという手法も評価された。
 解説報道部門の受賞は「パナマ文書」の実態を明らかにした「国際調査報道ジャーナリスト連合ICIJ」に与えられた。
 調査報道を貫く姿勢によって、アメリカの基幹メディアが、読者、視聴者の信頼回復を成し遂げていることに注目したい。



posted by media watcher at 19:06| Comment(0) | TrackBack(0) | 隅井孝雄のメディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月06日

倉本聰「やすらぎの郷」放送始まる(4/3)、往年のスター、石坂浩二、近藤正臣、有馬稲子、浅丘るり子ら、テレビの現状に対する批判盛り込む。

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 倉本聰の連続ドラマ「やすらぎの郷」(テレビ朝日)がはじまった(4/3)。テレビに功績のあった人々を迎え入れるという、高齢者ホームが舞台だ。脚本家役の石坂浩二が、事実上の主役だが、往年の名スターが退去出演している。浅丘ルリ子、有馬稲子、加賀まりこ、野際陽子、八千草薫、ミッキーカーチス、山本圭などだ。これらの人々とはテレビの初期、私自身何らかの形で触れ合った俳優さんたちだ。若い頃の思い出とかさなり、なつかしく見ている。
 私自身1958年(昭和33年)から40年にわたりテレビの世界で働いて来たので、他人事とは思えないドラマとして、テレビに見入っている。しかし、私自身は「やすらぎの郷」には受け入れてもらえない存在だと思い知らされた。ドラマの第二回、ドラマディレクター役の近藤正臣と、脚本家役の石坂浩二の間に次のようなやり取りがあった。身にしみる会話だ。
 石坂「厳しい審査があるらしい」、近藤「基準は何なんだ」、石坂「テレビドラマの世界に対して、これまでまじめに尽くしたかどうか、少なくとも一時期視聴者の心を洗うようなことがあったかどうかということだ」、近藤「それならオレにも資格があるな」、石坂「あんただめだよ」。近藤「どうして」、石坂「あんた局からサラリーもらっていたろう? 一時期でも局にいた者は資格がもてないそうだ」、近藤「なんで?」、石坂「テレビを今のようにくだらないものにしたのはテレビ局そのものだからだ」、近藤「オレは違うぞ、知ってるだろう?オレは違うぞ、オレは」、石坂「テレビの碌を食んだものは、テレビに食わしてもらったのだから、局と同罪にあつかわれるわけだ」。近藤「理不尽だよ」
 私はまっとうに仕事をしてきたことを自負しているが、世間的では通らないことを再認識した。今はもっぱら、硬派のドキュメンタリーを見ている。古巣の日本テレビは視聴率が好調だが、私の見る番組は少ない。
このドラマを見ながら、テレビの過去と現在が、走馬灯のように回転した。
posted by media watcher at 23:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 隅井孝雄のメディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月05日

木屋町高瀬川、旧立誠小学校跡地、60年賃貸契約、年間で2億円余りでホテルに開発する計画進む、校舎正面かろうじて残るが、地域文センター機能残るか、疑問?。

1704 開発 imgres.jpg1703 にぎわう立誠校庭IMG_3358.JPG1703 正面IMG_3345.JPG 
 3月31日、旧立誠小学校跡地の開発業者が決まったことについての住民説明会が開かれた。
 高瀬川沿いの旧校舎は耐震補強をして残し、旧校舎の西側に、8階建て200室のホテルと商業施設を建設するのだという。開発主は東京のデベロッパー、ヒューイック株式会社。市は賃借料として、年間2億3000万円受け取る契約だという。貸出期間は向こう60年というから、ほぼ半永久的だ。
 校舎部分の市民の活用の仕方は、地元立誠学区住民、開発会社、京都市の三者で協議するという。一応旧校舎の外観は残るが、学校の玄関がホテルへの入り口となるため、住民の自由な利用は保障されたわけではない。この措置が取られた背景には、高瀬川に面した部分が景観条例で三階以上の建物が制限されているという事情がある。
 校庭部分は避難所にも指定されているのだが、ホテル側は周辺を回廊で取り囲むという。そのため利用できる校庭跡地は1/3程度になるものとみられる。
 私も説明会に出席、映画発祥の地であることを考慮して、立誠シネマによる映画上映を続けること、映画博物館としての展示を充実させる必要があると発言した。
 参加者からは、選考の過程が非公開とされ、決定の前に住民の意見を聞くべきだったなど、市のやり方が不透明だったことに批判が集中した。またホテル部分が景観とそぐわない、賃貸期間が60年というのは長すぎる、などの意見も出た。
 今後市民の側からの働きかけを強め、地域の文化センターとしての性格を失わぬことが強く望まれる。立誠校の校舎がホテルの一部になってしまはぬようにする必要がある。

posted by media watcher at 10:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 隅井孝雄のメディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月30日

映画評 「私はダニエル・ブレイク」(I, Daniel Blake),ケン・ローチが描く、貧困者、弱者の深い憤り、だが彼ら、彼女らは心優しい

 1703 ダニエルポスターIMG_3320.JPG1703 ダニエル壁IMG_3335.JPG1703 ダニエル主役IMG_3326.JPG1703 ダニエル監督Ken LoachIMG_3327.JPG
 京都シネマで「わたしは、ダニエル・ブレイク」(I, Daniel Blake)をみた。69回カンヌ国際映画祭でパルムドール賞(最高賞)を得た作品だ。はびこる官僚主義、イギリスでも福祉行政は庶民の助けになることはない。いらだちが人々の間に広がる。ベルリン、カンヌ、ヴェニス、ロンドンなどで、様々な受賞の栄誉を得ている監督、ケン・ローチの最新作だ。
 主人公はイギリス北東部、ニューカッスルに住む大工ダニエル。妻に先立たれたが大工としてつつましく実直な暮らしをしていた。しかし心臓病で仕事ができなくなった。映画は彼が障害者手当を得ようと、福祉事務所を訪ねるところから始まる。ところが国のマニュアルでは仕事はできる、ということになり、失業手当を得るように勧められる。そのためには無意味な就職訪問をしなければならない。さらに申請書はデジタル化されているのでパソコンのフォームで書くよう言われるが、彼の人生はパソコンとは縁がない。
 何度も役所に足を運ぶうち、二人の子供を抱えてこの町にやってきた若い女性ケイティと出会い、親子を助けようと努力することになる。しかし。様々な隘路に突き当たった彼は、ある日突然役所の壁にペンキで自分の名と役所の非難を書きなぐり、人々の喝采をあびる。
 ダニエルに案内されてケイティ親子が地域のフードバンクを訪れるシーンは特に印象的だった。この映画は非情な役人だけではなく、フードバンクの親切な対応、途方に暮れたダニエルにコンピューターを教えてくれる人、などのシーンは一筋の光だ。
 ケン・ローチはこれまで北アイルランド問題、スペイン内戦、搾取される労働者などを描いてきた。「わたしはダニエル」に描かれた庶民の憤りは今世界各地で見られる、深刻な社会問題となっている。しかし貧困者のいらだちをここまで深く描いた作品は私にとっては初めての体験だった。
posted by media watcher at 17:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 隅井孝雄のメディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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