2017年04月24日

2017年アカデミー賞、最優秀作品賞の読み間違え、入国できなかった受賞者、トランプ批判、脈々流れる抵抗精神

 以下の文章は1703年3月10日、ラジオカフェの報道番組「グリーンコミュニケーション」で放送された。遅ればせのメディア・ウオッチへのアップです。記録としてご覧ください。アカデミー賞
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映画はインターネットやネット配信などの隆盛で映画が衰退するといわれていたが、映画館の大スクリーンで見る映画は、依然として人々を引き付けている。世界の年間映画人口は60億近くある・アメリカ4億、ヨーロッパ5億、日本1億5000万、(中国やインドはそれぞれ15億台)、ハリウッドの、ドルビー劇場で2月26日、開かれた今年のアカデミーショーはさまざま話題があったため、全世界で大々的に報道され、話題になった。
それは映画人たちの数々の反トランプの動き、黒人受賞、そして作品賞間違え読み上げだ。

出席できなかった人々
外国語映画賞を受賞したのはイラン人アスガル・ファルハディー監督の「セールスマン」、監督はトランプ大統領の入国禁止令に抗議、アカデミー賞には出席しなかった。その代り、同じ日にこの作品が、ロンドンのトラファルガー広場で無料上映された。ロンドン市長のカーン氏が呼び掛けたものだ。カーン市長自体、パキスタン系移民でイスラム教徒だ。そして監督の「入国禁止という非人間的な行為に抗議して、欠席した。世界を、私たちと敵に分断する、恐怖を生み出し、戦争を正当化する」とのメッセージを寄せた。
 短編ドキュメンタリー賞を得た「ホワイト・ヘルメット」の代表も、授賞式には出席できなかった。この映画はシリアの内戦のなか、飛び交う弾丸をかいくぐって市民の救助をしているが、招待されていた代表のラエド・サレハさんは空爆が激化し、出席を断念、ビデオメッセージで「シリアだけではなく各地で行われている市民殺害を止めるために、皆さんに立ち上がってほしい」と呼びかけた。
 
 トランプへの批判
司会のジミー・キンメルは冒頭で、「この放送は、多くのアメリカ国民と、(トランプの入国禁止令で)我が国を憎んでいる225ヵ国で視聴している、リベラルとか保守とかに分けるのではなく、みんなが思慮深い会話をすればアメリカを偉大にする」と発言。またトランプの障害者差別発言を批判したことで、トランプから「退屈な女優、過大評価されている女優」とツイッターされたメリルストリープを見つけると、「買いかぶりに耐えた人がここにいる」、と紹介、観客に拍手を促した。さらにあなたのドレスは「イヴァンカ?」と聞きただし爆笑を誘った。イヴァンカブランドは大統領の娘イヴァンカさんのブランドで、不買の動きなど話題となっている最中だ。
 アカデミー賞に先立つ恒例の前夜祭パーティーは、今回は中止され、その代わり、2月24日、俳優や映画関係者が集まり、入国禁止令に抗議する集会が開かれた。マイクを握った女優ジョディ―・フォスターさんは「民主主義への攻撃は表現の自由や市民の自由を脅かすものだ。今こそ私たちが意見を言うべき時、ホワイトハウスは私たち国民のものだ」と呼びかけた。
 
 最優秀「ムーンライト」など話題の作品
 最優秀作品賞を獲得した「ムーンライト」は、差別の中で暮らす黒人少年が、ティーンエイジャーに、大人に成長する過程を描く映画。いじめや麻薬売人などマイアミ黒人社会のありのままが描かれる。主人公はそうした環境でタフに育ち、純愛を実らせる。アカデミー賞の演技受賞者が全員白人であって批判されたことを考えると、黒人主人公、監督も黒人というこの映画が賞を得たのは意味がある。今年は助演男優賞、助演女優賞に黒人俳優が選ばれたことと合わせ、大きな変化があったといえる。ある意味では白人中心主義の差別主義者であるトランプへの批判も込められていると思えた。「ムーンライト」は、製作総指揮がブラッド・ピット(PLANB)であることも話題の一つだった。
 脚本賞と主演男優賞獲得の「マンチェスター・バイザ・シー」も自分の過去と向き合う労働者を鬱々とした気持ちを描いた。地味な作品でもヒットする可能性があることを示したといえるだろう。
 私は「ムーンライト」も「マンチェスター」も予告編しか見ていないが、「ラ・ラ・ランド」は映画館の大スクr−ンで見た。ハリウッドミュージカルの古典的なスタイルでつくられた映画で、色彩もあでやかだ。ストーリーも楽曲もオリジナル。随所に、全盛時代1950年代のハリウッド映画、ハリウッドミュージカルへのオマージュが出てくる。
 ラ・ラ・ランドというのはハリウッドの別名であり、夢の国という意味もある。主人公のアルバイト先は、ワーナー映画のカフェ、寝室にはイングリッド。バーグマンのポスターが張られ、ジャズミュージシャンである男性主人公はセロニアス・モンクや、ホーギー・カーマイケルを尊敬する。フリーウエイ110号線で車の渋滞の中で歌や踊りが展開、ハリウッドを見下ろすマウント・ハリウッド・ドライブで愛しあう二人が歌い踊る。カサブランカの窓のセットも出てくる。古きよき時代の文化を魔法の手が現代に生き返らせることに成功したように見える。

 社会へのハリウッドの抵抗
 ハリウッドが、社会の波に翻弄されながら生きながらえているのは、いまさらのことではない。
 1973年、ゴッドファーザーでアカデミー賞を受けたマーロンブランドは会場に姿を現さなかった。代わりに会場に現れたネイティブ・アメリカンの女性は壇上から、「ハリウッドの白人以外のマイノリティーが不公平に描かれていることへの抗議だ」と説明した。彼はかねてからネイティブ・アメリカンの差別反対の運動に熱心であり、それだけではなく、映画の中のアジア人、黒人、インディアンへの差別的な描き方は、「その人種の人々を深く傷つけている」と語っている。
イラク戦争が起きた直後2003年3月、「ボーリング・フォー・コロンバイン」でアカデミー賞を受賞したマイケル・ムーアは「我々は虚偽の理由で人々を戦争に送り出す男が大統領だという時代に生きている。この戦争に反対だ、ブッシュ大統領よ、恥を知れ」と壇上で発言した。
 2016年1月、この年のアカデミー賞のノミネートが発表されると、ツイッターに「#Oscarsowhite」というハッシュタグが出回った。主演男優女優賞の候補20人がすべて白人だったからだ。2002年デンゼル・ワシントン、ハル・ペリーが男優、女優主演賞をW受賞してようやく黒人俳優に陽があたるようになり、2014年までに7人の受賞者が出たが、2015年、16年と連続してノミネートがすべて白人となってしまった。16年のアカデミー賞では多くの黒人俳優、監督が出席を拒否する事態となり、大きな社会問題となった。
 
今年のアカデミー賞は、トランプ政権批判、黒人、メキシコ系、イスラム系あらゆる差別を乗り越えるものとなった。

 

posted by media watcher at 22:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 隅井孝雄のメディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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