2017年03月30日

映画評 「私はダニエル・ブレイク」(I, Daniel Blake),ケン・ローチが描く、貧困者、弱者の深い憤り、だが彼ら、彼女らは心優しい

 1703 ダニエルポスターIMG_3320.JPG1703 ダニエル壁IMG_3335.JPG1703 ダニエル主役IMG_3326.JPG1703 ダニエル監督Ken LoachIMG_3327.JPG
 京都シネマで「わたしは、ダニエル・ブレイク」(I, Daniel Blake)をみた。69回カンヌ国際映画祭でパルムドール賞(最高賞)を得た作品だ。はびこる官僚主義、イギリスでも福祉行政は庶民の助けになることはない。いらだちが人々の間に広がる。ベルリン、カンヌ、ヴェニス、ロンドンなどで、様々な受賞の栄誉を得ている監督、ケン・ローチの最新作だ。
 主人公はイギリス北東部、ニューカッスルに住む大工ダニエル。妻に先立たれたが大工としてつつましく実直な暮らしをしていた。しかし心臓病で仕事ができなくなった。映画は彼が障害者手当を得ようと、福祉事務所を訪ねるところから始まる。ところが国のマニュアルでは仕事はできる、ということになり、失業手当を得るように勧められる。そのためには無意味な就職訪問をしなければならない。さらに申請書はデジタル化されているのでパソコンのフォームで書くよう言われるが、彼の人生はパソコンとは縁がない。
 何度も役所に足を運ぶうち、二人の子供を抱えてこの町にやってきた若い女性ケイティと出会い、親子を助けようと努力することになる。しかし。様々な隘路に突き当たった彼は、ある日突然役所の壁にペンキで自分の名と役所の非難を書きなぐり、人々の喝采をあびる。
 ダニエルに案内されてケイティ親子が地域のフードバンクを訪れるシーンは特に印象的だった。この映画は非情な役人だけではなく、フードバンクの親切な対応、途方に暮れたダニエルにコンピューターを教えてくれる人、などのシーンは一筋の光だ。
 ケン・ローチはこれまで北アイルランド問題、スペイン内戦、搾取される労働者などを描いてきた。「わたしはダニエル」に描かれた庶民の憤りは今世界各地で見られる、深刻な社会問題となっている。しかし貧困者のいらだちをここまで深く描いた作品は私にとっては初めての体験だった。
posted by media watcher at 17:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 隅井孝雄のメディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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