2016年07月10日

オバマの広島訪問を世界はどう受け止めたか

 以下の記事は、月刊誌「宣伝と組織」7月号に掲載されたものです

 5月27日アメリカのオバマ大統領が広島を訪問、原爆慰霊碑に花輪をささげ17分にわたる演説を行った。日本の新聞、テレビは大々的に、しかもきわめて好意的に報じたが、世界はどのように受け止めたのだろうか。
 現職のアメリカ大統領が原爆の地を初めて訪れるとあって、世界の主要なメディアは多大な興味を持って広島の慰霊碑の前に集まったことは言うまでもない。スピーチを終えたオバマ大統領が、被爆者の一人と抱き合った光景は人々に感動を与え、多くの新聞写真や、テレビニュースで世界中に流れた。
 好意的だったヨーロッパメディア、米の核兵器近代化に批判も
BBCワールドニュースは抱擁の映像とともに「原爆を投下した唯一の国の指導者が犠牲者に献花した象徴的な意味は大きい」と報じた。また「オバマ大統領が1兆ドルの核兵器近代化案を推進している」こと、演説のすぐ近くに「核ボタン」の入った黒いカバンが置かれていたことなどを引き合いに出して、「アメリカが依然として核大国の地位にある」と批判した。また仏紙ルモンドが「アメリカで核兵器の削減が進んでいない」とオバマ大統領と米国議会の双方の責任に言及した。
 しかし全体としては、ヨーロッパのメディアは「核なき世界を目指す」という演説の趣旨を好意的に受け止めた。就任直後2009年にプラハで行った「唯一の原爆使用国として責任を痛感し、核廃絶の道に進む」という演説の継続を図り、次世代へつないでいこうという意欲を感じ取ったのだと言える。
 中国、加害者としての日本の責任追及
 韓国各紙は、オバマ大統領の広島訪問に対して「日本は被害者ではない」と批判的だったが、演説の中で韓国人犠牲者を追悼したことを評価した。しかし中国メディアは「(日本が)戦争で行った行為を薄れさせ、被害者のイメージを強化させようとしている」(中国国営テレビ)と批判、中国王毅外相は「南京を忘れてはいけない。原爆被害者に同情するが、加害者は責任を逃れない」と述べたことが大々的に報道された。中国、韓国などが、「日本が“被害者”と強調するのは、歴史の歪曲を許すことになる」と批判していることを日本と世界は改めて認識する機会となった。
 アメリカ世論は“容認”
 アメリカでは懸念されていた「大統領広島訪問」への批判はほとんど起きなかった。事前に“謝罪することはない”と伝えられていたが、むしろニューヨークタイムス、ワシントンポストなど主要メディアは、広島で改めて核廃絶を表明する歴史上の重要性があると後押しした。オバマ演説を伝えた5月27日付のニューヨークタイムスは、被爆者と抱き合うなどシーンもあり「多くの日本人に歓迎された」と伝えた。一方国内の核兵器削減は「戦後の歴代大統領のうちで最も少なかった」ことを指摘した。
 しかしオバマ大統領と並んでスピーチした安部晋三首相に対しては、「第二次大戦中にアジアで引き起こした惨禍の歴史を忘れ、平和主義を捨てようとしていることが中国や韓国の批判を招いている、“過ちは二度とくりかえりません”という慰霊碑に反する」と苦言を呈した。


posted by media watcher at 16:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 隅井孝雄のメディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
Media watch.gif

隅井孝雄のメディア・ウォッチブログ