2016年04月26日

テレビ番組評 ドキュメンタリー「赤宇木」(NHK, BS1, 16/3/13) 放射能測定値日本で最も高い、100年後に記録を残したい

 以下の「テレビ評」は赤旗ラジオテレビ欄コラム「波動」に4月24日掲載されたものです
 ドキュメンタリー「赤宇木」 100年後に記録を残したい

 福島県飯舘村赤宇木、あこうぎと読む。110戸の山村、浪江から飯舘方面に入る阿武隈連山のだだ中にある。2011年3月17日、公民館に身を寄せ合っていた人々は、村に入った取材班に線量計が80マイクロシーベルトあると聞かされた。それがすべての始まりだった。放射能汚染量が全国でもっとも高い場所として伝えられることになった。100年たたなければ人は住めないともいわれた。
 それから5年、村の記録を残そうと、区長の今野義人さんらは、季節ごとに村に通い、写真を撮り、線量を図り、労働の証を訪ね、古文書を開き、村の歴史の痕跡をさがす。5年前の思いを村人と共有するテレビスタッフが追ったドキュメンタリー「赤宇木」(3/13NHKBSプレミア)である。
 木の実を拾い、獣を追い、田畑を切り開いてこの地に住んだ人々。村は天明の飢饉をのり越え、戦争中は若者の出征、古木の伐採、供出、戦後の満州帰還者の開拓など、辛酸を経験しながら懸命に生きた。しかし降り注ぐ放射能ですべてが断ち切られた。記録が残れば、後の世の人々が再びルーツをたどって住むこともある、と言う思いが画面から迫る。
 放射能がタブーになりつつある。数字は語られても、人体への被害はあいまいにされている。まして汚染が村を奪い、暮らしを奪い、つながりを奪い、そして心に大きな傷を残したことは、伝えられることが少ない。
 この番組の前身ともいえる「放射能汚染地図」は今中哲二氏(京都大学原子炉研究所)らの協力により、現地実測をもとに6回にわたって放送された。われわれが初めて高放射能にさらされている実感を持つことになった貴重な番組である。
 今回の番組では、放射線量の計測もさることながら、赤宇木の人々の長い歴史に焦点を当てた。あまりにも美しい自然のたたずまいの中で、村人も、制作スタッフも感傷を禁じ得ない。番組はそれを隠さず率直に吐露した。繰り返す自然災害と放射能汚染を抱える、日本そのものの運命と歴史を暗示しているのかも知れない。
 村の歴史編纂は間もなく終わる。ここ赤宇木で自然と人が共存できる時が来るのか。わずかな希望を番組は遠い先の世代に託した。(すみいたかお)
posted by media watcher at 21:39| Comment(0) | TrackBack(0) | 隅井孝雄のメディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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