2016年03月24日

議論呼ぶ高市総務相の放送免許停止発言、その背景と問題点を探る。放送法4条が口実。本来削除すべき。アメリカでは公正原則廃止し、自由化。

 この記事は月刊「組織と宣伝」 2016年4月号に寄稿したものです。
 2月8日、衆議院予算委員会で高市総務大臣は「政治的に公平であることを定めた放送法違反が繰り返されれば免許停止の行政処分もあり得る」と発言、安倍首相もまた国会で質問に答える形で高市発言を追認した。
「憲法9条の改正に反対する政治的見解を支持する内容を放送した場合は?」という野党議員の質問に「罰則(免許停止)を適用しないとはいえない」と言う答弁だった。
 これに対しニュースキャスターら8人が「言論表現の自由に対する抑圧、恫喝だ」(2/29)との記者会見を行った。また樋口陽一東大名誉教授ら憲法学者が、「免許停止などの措置をとって放送内容に介入するのは憲法違反だ」(3/3)という見解を発表した。

 放送の自由に対する干渉は禁止されている
 放送法第4条には放送番組の編集基準として「政治的に公平であること」、「報道は事実を曲げないこと」、「意見の対立する問題については多角的に論点を明らかにすること」などが書かれている。これを高市総務相は政府の介入の根拠としている。だが放送局の自主的倫理規定の基準であるというのが法律的解釈である。
放送法の第3条には「放送番組は何人からも干渉され、規律されることはない」とある。また放送法第1条には「(政府は)放送の不偏不党、真実、自律を保障し、放送による表現の自由を確保すること」と定めている。行政の介入、干渉を禁じているのだ。
 憲法第21条の「言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」という大原則がある。電波の割り当てのために一定の行政の関与が必要であるため、放送法ではそれ以外の番組内容への国の関与を制限するという趣旨で定められているのだ。安倍首相、高市総務相はそれを曲解し、免許停止を武器にして、放送を意に沿うものに変質させようと企図していると、私は見る。

 放送法4条「番組規制」は外して、自主、自律の確立を
 「放送の公正」などを定めた放送法第4条は、制定当時アメリカにあった公正原則(Fairness Doctrine) をモデルにした。しかしアメリカではこの条項は言論、表現の自由に反すると最高裁が判断された。また地上波放送以外に、ケーブル、衛星、インターネットネットなどテレビ、ラジオの搬送手段が多様化したことも理由となり1987年から2011年にかけて全面的に廃止された。現在放送の公正は各局の自主的な判断にゆだねられ、自由化された。
 日本でも政府の干渉の口実になる放送第4条は見直して、廃止すべきではないかと私は思う。テレビ、ラジオともに多チャンネル化している。BS,CS局は有料、無料合わせて114チャンネルに達する。インターネットでも、fuluやNetfilixなど数多くの動画配信が次々に誕生している。

 国民の平和指向vs安倍政権戦争への道
 メディアをとりこみたい、というのは安倍政権の重要な政策の柱だ。憲法改正を究極の政治目標とする安倍首相にとってのハードルは日本国民の平和指向に他ならない。世論調査の数字がそれをはっきり物語っている。特に憲法9条の賛否は、朝日63対29、毎日55対27、NHK41対28、保守的とみられる読売でさえ40対20だ(2015年5月)。
 安倍内閣は、世論を変えるためマスメディアを手中に収める方策を講じながら、戦争参加を可能にする政治立法を並行的に進めた。その流れを見て欲しい。
 秘密保護法の制定(13年12月)、NHK会長の送り込み(14年2月)、集団的自衛権の閣議決定(14年7月)、慰安婦問題での朝日新聞バッシング(14年9月)、民放キー局に対し街頭インタビュー、コメンテーターの発言規制を自民党が要望(14年11月)、テレ朝とNHKを呼びつけ番組に問題ありと事情聴取(15年4月)、マスコミを懲らしめ発言(15年6月)、安保法制強行採決(15年9月)、高市総務相の免許停止発言(16年2月)、国谷、古舘、岸井三キャスター退任(16年3月)、緊急事態条項を憲法に新設するとの安倍発言(16年3月)、憲法改正を在任中にの安倍発言(16年3月)。

 報道の自由擁護の国民運動を
 世界各国のメディアは日本で進行している政権による報道規制に驚愕している。英紙The Guardian(ガーディアン)は免許停止の高市発言について「英国では考えられない、政権による脅迫行為だ、日本で言われている中立公正な報道は英国では価値を持つ政治報道とは見なされない」(2/17)と述べている。
危機に陥っている報道の自由、自主自律を擁護するために、大規模な国民的行動を展開することが必要ではないか。



posted by media watcher at 17:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 隅井孝雄のメディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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