2015年10月08日

NHK受信料、義務化に向けて自民党が提言、郵政省検討を開始、iPhone受信からも徴収、テレビ無くても全世帯対象もあり得る

 以下の記事はコミュニティーラジオFM797(京都三条ラジオカフェ)のニュースワイド 「おはようさんどす」で2,015年10月5日放送されたレポートに加筆したものです。

 自民党情報通信戦略調査会放送委員会は9月24日NHKの受信料を、「受信契約の有無にかかわらず義務化する」という提言をNHKと放送監督にあたる総務省に提出した。これを受けて高市総務相は10月2日受信料義務化などを検討する有識者会議を今月中に発足させると発言した。また自民党委員会の提言では義務化にあたっては「マイナンバー」も活用すべきだとしている。

 不払い24%、英国の罰則、あるいはドイツの全世帯徴収を導入?
 NHKの受信契約世帯の受信全世帯の76%に留まっており。NHKは契約世帯率の向上に努めているが成果は上がっていない。毎日新聞の報道によると徴収コストは受信料収入の10.7%、735億円に達している。読売新聞(10月3日)の報道では英BBCの支払い率は95%、ドイツ公共放送は96.6%。自民党委員会では不払いに罰則がある英国、テレビ受像機の有無にかかわらず全世帯から徴収するドイツ公共放送などを参考に検討することを求めている。NHKの財政は健全なのになぜ今義務化なのかという疑問もある。
 日本の場合放送法に「受信機を設置した世帯はNHKと契約しなければならない」との記載がある。信頼関係を基礎にした契約で8割近い支払いがあることは海外から見て公共放送の理想だという見方もあり、義務化や、罰則化には問題があるという意見は、放送関係者の間に多く、NHKの内部にも同じ見方があると言われている。現行の制度を続けるべきであり、NHKが良質な番組、信頼出来る報道姿勢を取ることが先決だという考えが支配的であることから、今回の自民党の提言には疑問があるとする意見も多い。しかし自民党は不払いが解消されれば、受信料は大幅に値下げできるとしている。
 ちなみにNHKの年間の収入は6831.5億円、そのうち受信料収入は6608.4億円で96%に達する。市民の支えなくして存在できない組織だといえる。

 IT受信からも徴収したい、いっそテレビの有無にかかわらず全世帯課金も?
 提言では「受信契約の有無にかかわらず義務化する」といっている。その意味は定かではないが、NHKとの間で受信契約がない世帯も支払い義務が生ずる、ということだから、テレビを持っていて、支払っていない世帯も支払い義務が生ずるということを越えて、ドイツのように、テレビを持っている、持っていないにかかわらず、全世帯あるいは事業所に支払いを求めることだと解釈することもできる。もしそうなら国民的な論議が巻き起こるのは必至だ。
 自民党調査会の提言について、NHKは「3カ年計画を検討中だが、その中で受信料のあり方を研究中」とのコメントを出した。NHK籾井会長は10月1日、マンションでオートロックが増え、大都市では転勤者が多く、未契約世帯の捕捉が困難であることから「受信利用徴収にマイナンバーを利用できることが望ましい」と発言した。
 NHKはインターネットで番組を流す計画で、9月3日からインターネット同時配信の実験放送を始めた。本放送になれば、各種IT機器の視聴者から受信料を徴収することを考えているとみられる。しかし新たなITからの受信料徴収は手数が非常にかかる大事業となる。もし全世帯、全事業所に義務化すれば一挙に問題は解決する。その意味では今回の自民党の提言は、渡りに船だと見ることも出来る。自民党は不評なマイナンバーを受信料と結び付けることで、マイナンバーの普及に弾みを付けようという思惑も見え隠れする。

 受信料を義務化する手本はドイツとスイス。
 ドイツは2013年、受信料を廃止して放送負担金制度を導入した。
負担金は世帯ごと(住居ごと)に徴収される。生活保護世帯、失業保険世帯、連邦奨学金受給者は免除される。これまで無料だった聴覚、視覚障害者は字幕、手話、音声サービスが公共テレビに付加されることから負担金の3分の1を収める。事業者は従業員数に応じて10段階の額が定められた。また業務用車両は2台目から1/3、ホテルは部屋ごとに1/3、障がい者施設、介護施設、老人ホーム、学校、非営利団体事務所は一件分のみの負担となる。金額は一件あたり17.5ユーロ(約2,400円)。ドイツの公共放送が良質な番組を放送し国民の厚い信頼を受けていることから、国民からの反発はほとんど見られなかった。
 スイスでは6月14日に実施された国民投票でテレビの有無にかかわらず全世帯から徴収することが決まった。賛成50.1%、反対49.9%の僅差だった。スイス政府は「PC、スマホで番組を見るインターネット時代に対応するためだ」と説明している
 
 罰則付のBBCは経営困難に直面、
 イギリスのBBCは受信料制度が維持されているが、無料のテレビ見逃しサービスiPlayerが50%の普及率を見せているため、財政が圧迫され、経営危機に陥っている。
 一方、英政府は社会福祉予算の大幅削減に伴い、75歳以上の受信料免除を2018年以降打ち切ることを決めた。これまでは75歳以上の受信料相当分(一世帯年145.5ポンド26,465円、総額37億ポンド、6728億円)を政府が負担しBBCに交付していた。BBCは補助金打ち切りの見返りに、物価に連動して受信料をひきあげることができる。また政府は見逃しiPlayerなどで視聴しているテレビを持たない世帯にも受信料が課せられるよう、法改正を検討している。

 IT機器からの受信料捕捉が課題
自民党の提言でははっきりしないが、義務化にあたっては、IT受信をどうするかが大きな問題となる。ドイツではテレビの空中波受信が5.4%と非常に少なく、衛星受信、ケーブル受信、IT受信が主流であることから、全市民の公共負担制度が選択された。日本でもワンセグ受信、iPhone受信などIT受信からも徴収することが計画されており、NHKガネット送信を開始すれば、世帯特定ではなく、全世帯に公共税として付加することも考えられる。現行と同様に受信世帯を特定する場合には、IT受信をどう捕捉するかが課題になるだろう。
posted by media watcher at 15:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 隅井孝雄のメディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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