2015年09月15日

丸木夫妻「原爆の図」、北米(ワシントンDC、ボストン、ニューヨーク)展示、衝撃を与える。「米兵捕虜の死」も展示された。

 「原爆の図」北米展(ワシントンDC、ボストン、NY)が衝撃、「米兵捕虜の死」も展示
 8月10日からワシントンDCで開催されている丸木井里.駿夫妻の「原爆展」が今までに無い新たな反響を呼んでいる。この展覧会は8月16日までワシントンDCのアメリカン大学美術館で開催された後、今年いっぱい、ボストンやニューヨークを巡回中。
 数々の原爆資料や遺品とともに展示された丸木作品は「幽霊」、「火」 、「署名」、「灯籠流し」、「米兵捕虜の死」、「カラス」の6点。丸木夫妻の原爆の図は15点あるのだが、興味深いのは今回の展示作品の中に1971年に制作された「米兵捕虜の死」、1972年に制作された「カラス」が含まれていることだ。原爆の図はアメリカで1970〜71、1988年、1995年の三回開催されているが、ベトナム戦争中であった最初の展覧会の際、アメリカの観客から、「被害を強調するだけでよいのか」との批判を受けた。そして丸木夫妻は広島で命を落とした米軍捕虜と、誰にも顧みられなかった朝鮮人被爆者の悲惨な死を描いた「カラス」を制作した。その二点が今回のアメリカ展に加えられている。
 実は、20年前、スミソニアン航空宇宙博物館で、総合的な原爆展が企画され、それが否定され、エノラゲイ機の功績を讃えるものとなった時、スミソニアンにはすでに広島、長崎から、数々の写真、資料などの展示品が送られていた。行き所を失ったこれら資料を含む原爆展企画を引き取り、広島、長崎の惨状、被爆者の苦難、そして日本の人々の平和への熱情を展示し、討論を組織したのはアメリカン大学であった。
 またワシントンの教会(All Souls Unitarian Church)は原爆投下の二年後1947年、広島の爆心地に近い、本川小学校に大量の絵の具、クレヨンなど画材を送った、それへの返信として、本川小から生徒の日常を描いた絵が送られてきた。その縁で被曝の子どもたちの絵もアメリカン大学美術館で展示されている。・・・・・
 溶けたガラス瓶、十字架、様々な写真やパネルは初展示である。そして丸木位里夫妻の描いた6枚の連作、大画面の「原爆の図」にはおびただしい数の人間が描かれている。アメリカン大学美術館のラスムッセン館長は「戦争の悲劇と平和へのメッセージは万国共通だ。我々は過ちを繰り返さないため過去と向き合わなければならない」と語る。
 またこの展覧会の開催を伝える「ワシントンポスト」は改めて地獄としかいえない広島、長崎の惨状を克明に伝え、死者が広島14万人、長崎7400に達したことを正確に伝えている。これまでのアメリカメディアの原爆報道と較べてきわめて迫真的な描写だ。
 さらにワシントンポストは「当初原爆による日本の被害のみを描いた丸木夫妻が、その後アウシュビッツ、南京虐殺、沖縄戦を描いた」、と記事の中で紹介した。今回の展示に含まれる米軍捕虜の被爆者、放置されてカラスについばまれる朝鮮人被害者も、参観者の目を引いたことが記事に書かれている。そして丸木夫妻の「原爆の図」が世界的視野にたっての人類に対する警告となっていることを示し、記事は戦争による「原爆投下など残虐行為を2度と繰り返すべきではない」と締めくくっている。
 私はアメリカでの今回の「原爆の図」展が、これまで原爆投下を正当化してアメリカの世論に大きな変化をもたらすものであることを確信している。

 今回の丸木展はかつて私が一緒に仕事をした仲間である、日本テレビの早川与志子プロデューサーだ。アメリカン大学教授で、オリバー・ストーンと組んでいるドキュメンタリー制作者ピーター・カズンズ氏の全面協力で開催に至ったものである。80団体と2000人の賛同募金も800万円を越えた。(目標1000万円)。
 開会式では、ピーター・カズニック教授の司会で、広島平和資料館館長、丸木美術館館
長、広島、長崎の被爆者などがそれぞれの思いを語った。また、オール・ソウル・チャーチ合唱団の演奏で盛り上がった。会場には1000人以上の市民が集まったが、原爆がアメリカを救ったと言う声は聞かれず、世論の意思として、核廃絶に向かうべきだとの声が圧倒的だった。原爆についての正確な情報が伝われば、アメリカの世論も変化する。ということを示す展覧会であったといえよう。
 ワシントンでの展示は8月16日までだったが、今年いっぱい、ボストン、ニューヨークなどで開催される。
posted by media watcher at 21:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 隅井孝雄のメディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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