2015年08月08日

原爆開発製造の「マンハッタン計画」跡地を国立公園に、公式決定(7/28)。20年前の「エノラゲイ」展の二の舞になるのか。

 原爆開発製造の「マンハッタン計画」跡地を国立公園に、公式決定(7/28)。20年前の「エノラゲイ」展の二の舞になるのか。
(この記事は2015年8月3日、FM79.7京都ラジオカフェの番組「おはようさんどす」のコメントコーナー「隅井孝雄のメディアコラム」で放送された)

 原爆開発跡地を公園に?
「マンハッタン計画」という言葉をあなたは知っているだろうか。1942年から45年にかけての原子爆弾開発プロジェクト名である。その壮大な歴史跡地をアメリカの国立公園にする計画をアメリカ公園局とエネルギー省が7月28日発表した。
 1945年8月、マンハッタン計画のもとで製造された原子爆弾が広島と長崎に相次いで投下された。二つの都市が消滅し12万人が一瞬にして命を奪われた。しかしアメリカはその後も核兵器の製造を継続、現在7300発(2014.4米国務省発表による)の核兵器を保有している。
 国立公園として整備されるのは、原爆の設計開発が行われたニューメキシコ州ロスアラモス、ウラン濃縮やプルトニウム製造のためのテネシー州・オークリッジの原子炉、ワシントン州ハンフォードの原子炉など。しかし一部施設は今でも研究や核物質の管理に使われているため、市民の立ち入りが出来ない区域が多い。また未だに高レベル放射能物質の除染が続いていて、そのために立ち入り出来ない地域もある。
 公園化する計画についてはアメリカでも賛否の意見が出たため、2012年に一度否決されたが、地元議員の熱心な働きかけで、「関連施設を保護し、マンハッタン計画の歴史と、遺産についての一般の理解を深める」ために再提案され成立したものである。
 日本はもとより、アメリカ国内でも、「戦争を早期に終わらせたなど歴史を歪曲する意見がある、原爆投下を正当化することにならないか」という批判がある。

 '95年スミソニアン原爆展をめぐる確執
 このニュースを聞いて思い出したことがある。
私がアメリカで仕事をしていた1995年、首都ワシントンDCのスミソニアン航空宇宙博物館で原爆を広島に投下したB29爆撃機「エノラ・ゲイ」の50周年記念特別展が開催された時のことを思い出した。そもそもこの展覧会は戦後50年にあたって、原爆投下の歴史的経過や被害の実相など歴史的事実を展示、検証するために計画され、博物館と広島市、長崎市の緊密な連携のもとで企画作業が進行した。
 ところがこの計画に対し全米退役軍人会や空軍協会を先頭にした猛烈は抗議行動が起こり、原爆を総合的に展示しようという企画は全面的に中止された。そして修復されぴかぴかに輝く銀色の機体「エノラゲイ」特 別展示となった。ここではB29がいかに優秀な爆撃機であったかが誇示され、「エノラゲイ」が100万人の米軍兵士の命を救い、戦争を早期終結させた英雄であることが強調された。いわゆる原爆神話である。ある意味では歴史認識のねつ造を行った展覧会ですらあったという事が出来よう。

 原爆神話は歴史認識歪曲ではないか
 100万人という原爆神話はのちに退役軍人会ですら25万人という数字に後退させた。さらに歴史学者により、アメリカ軍が上陸作戦にあたり戦闘部隊のうち6300人の被害が出るという指揮官(マーシャル将軍とキング提督)の見解があったことが確認されている。
 一方広島で14万人、長崎で7万人が一瞬にして命を奪われたことは歴史的事実である。しかしアメリカでは広島7万、長崎3万という調査報告が流布され、教科書などの数字の根拠として使われている。
その後核兵器廃絶の国際世論が高まり、原爆の兵器としての非人道性も指摘されるようになった。そして2009年、アメリカのオバマ大統領が、核廃絶の必要性を述べたことから国際世論に変化が起きた。にも関わらずアメリカでは未だに原爆が日本の敗戦を早めた、米兵の多数の死傷者を救ったという神話が人々に信じられ続けている。
 エノラゲイの機体は現在スミソニアン航空宇宙博物館の別館であるスティーブン・ウドヴァーヘイジセンター(ダレス空港近く)に常設展示されている。
posted by media watcher at 15:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 隅井孝雄のメディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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