2015年07月07日

番組批評、三回シリーズ「戦後70ニッポンの肖像」外交編、久しぶり「慰安婦」問題に触れるも、史実に則り淡々、新味なし、オランダ編は出色。

 NHKが久しぶりに慰安婦問題を取り上げるというので6月19日のNHKスペシャル「戦後70年、日本の肖像」を見た。世界の中の日本を探る三回連続の「外交」特集の第一回(信頼回復への道)だ。
NHKは2001年ETVで放送予定だった「問われる戦時性暴力」で従軍慰安婦部分の番組を大幅に改変して、政治介入ではないかと問題になった。その後番組のテーマとしてまともに取り上げたことはなかった。

 河野談話、村山談話など謝罪と反省は明記
 第一回のオープニングは、安倍首相がアメリカ議会で行った演説の一節「アジア諸国民に苦しみを与えた事実から目をそむけない」を持ってきたのは政権への配慮かと思わせる出だしであった。インドネシアなど一部東南アジア諸国に対する賠償、準賠償をレポートしたのに続き、韓国とは強制労働の賃金、接収された財産などの請求権問題で交渉が難航したこと、しかしクーデターで生まれたパク政権との間で、経済援助によって韓国の国力強化に協力することで決着したこと、その後1987年韓国民主化運動で独裁政権が倒れ、”戦時中の被害補償の声”が高まったこと、そして1991年、従軍慰安婦が名乗り出て、日本政府に国家補償を求める事態に発展したこと、などが描かれた。
 1992年宮沢訪韓、1993年慰安婦聞き取り調査があり、慰安婦問題の石原信雄官房長官の調査、河野談話、村山談話によって植民地支配を認めて反省と謝罪を行い、1995年のアジア女性基金誕生となったが、韓国の市民の納得を得ることができなかったこと、などが史実に沿って明らかにされた。ここまではNHK以外のメディアが繰り返し語ってきたことであり、目新しい事実が発掘されたわけではない。

 慰安婦、オランダとの経緯
 この番組の中で目を引いたのは「オランダ」との間の慰安婦や捕虜の問題だ。戦争被害者に対する取り組みとして、1996年から始まったのは福岡県水巻町にあるオランダ人人捕虜871名の施設「十字架の塔」への被害者家族の訪問であった。住民による慰霊の取り組みはオランダ側の参加者の感動を呼んで、オランダの人々が心を開くきっかけとなった。このレポート部分は出色であった。日本が反省するとすればこのような交流が韓国との間でなぜ出来なかったかということであろう。
 今後NHKが慰安婦問題を避けずに、その深部を掘り下げる努力をするよう願いたいものだ。

 日本現代史の客観性保つ、教科書に使える
 三回シリーズのこの番組は、第二回(冷戦、日本の選択、6月20日放送)は冷戦期の時代、沖縄返還が実現し、中国との国交回復が行われた時代、第三回(平和国家の試練と模索、6月21日放送)は冷戦の崩壊、9.11のテロと紛争の時代、湾岸戦争、イラク戦争の中での平和国家としての模索を描いた。
 いわば近現代史を偏見で歪曲することなく、淡々と俯瞰したような番組だった。安保法制の議論に揺れる今の日本をもう一度見つめ直しという意味で、一定の意義があった番組だと思う。(隅井孝雄)
posted by media watcher at 13:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 隅井孝雄のメディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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