2015年06月22日

日本のテレビジャーナリズムと民主主義を考える、放送行政を政府から切り離した独立委員会制、NHKの会長公選制、メディアに対する強力な市民運動が必要

 以下は5月21日、京都教育文化センターでの講演会「ジャーナリズム、NHK,日本の民主主義」
での隅井孝雄の講演要旨です。

 このところ政府、自民などからの、ニュース報道に対する介入が続き、憂慮すべき事態となっている。京都教育センターで、民主主義の危機を乗り越える手立てはあるのか、討論会が開かれた。講師は新妻義輔さん(元朝日大阪編集局長)と私隅井孝雄だった。元日テレ報道記者、日テレインターナショナルという肩書き付きで、いささか気恥ずかしい。以下私の論点。

 安部内閣成立以来、メディア対策は系統的組織的に展開されている
 秘密保護法制定、NHK会長に意のまま動かせる人物の送り込み、メディア首脳部と会食懇談、朝日新聞バッシング、そしてテレビ朝日報道ステーションへの干渉、自民党によるテレビ局への事情聴取、などが続いている。
 昨年の衆院選に際して、自民党はテレビキー局に対し、コメンテータの選び方、街頭インタビューの取り上げ方に偏りがあると注文をつけた。
 以前から指摘されていることだが、欧米では放送局免許、監督は政府与党から切り離し、独立した行政委員会に委ねられている。だから日本のように、政府や与党が放送に介入干渉することはない。
市民活動の活発なアメリカでは、公共テレビPBSへの共和党の干渉に対して、市民の電話やインターネットの反撃がPBSへの介入を阻んだこともある。
 イギリスBBCは、アイルランド紛争、イラク戦争などでの政権の干渉をはねのけた。そのイギリスには、VLV(視聴者、リスナーの声)、CPBF(新聞放送の自由委員会)などの強力な市民運動組織が活発で、市民が言論の自由を守っている。
 EUヨーロッパ連合では「報道の自由憲章」を制定、新聞、放送、ジャーナリストは民主主義の基礎だとして、各国政府にメディアや記者の取材の自由を徹底尊重することを求めている。
 日本でも、強力なメディア市民運動組織が必要だ。とりあえず、私たちが拠出する6,500億円で運営されているNHKの会長選出にあたっては、視聴者が候補者を推薦し投票できるよう、公選制にし、候補者の公約をテレビで放送する制度にしてはどうだろうか。またいい記事、番組を推薦し、問題ある記事番組を投稿する活動が活発化すれば、大きな効果を上げるだろう。
 
 資料1、政府自民党の最近のメディア介入
2012。12、安倍第二次内閣発足
2013.7.21、参院選、ねじれ解消、与党独断体制となる。
2013.12、秘密保護法強行成立、メディア取材抑圧、国民の知る権利制限、相互監視
2014.1.25、NHK籾井会長就任会見政府が右というものを左と言わない
2014.3~4 安倍首相、マスコミ首脳と頻繁に会食、問題となる
2014.11.20、自民、民放キー局に注文、ゲストの人選、街頭インタビューなど
2014.11.26、自民、テレ朝のアベノミックス批判報道を一方的とし、”公正”報道要求
2014.12.14、衆院選、自公で安定多数、安倍首相、選挙特番テレビ出演で、(TBS、日テレ、テレ東)、報道批判
2015.2.2、安倍首相カイロでISと戦う諸国に支援と演説(NHKワールド報道)
2015.2.3 イスラム国、後藤健二さんら日本人人質を公表、後殺害
2015.2.3、外務省テレ朝に安倍首相中東訪問に関した訂正申し入れ
2015.9.11、朝日新聞慰安婦報道訂正で社長辞任、朝日へのバッシング起きる
2015.3.28、菅官房長官、テレ朝報道ステーションの古賀発言I am not Abeを批判、放送法違反と示唆。
2015.4.17、自民党、テレ朝、NHKの経営首脳を呼んで番組について事情聴取

 資料5 放送の管理監督、周波数割り当て第三者委員会
アメリカFCC(連邦通信委員会)、放送通信事業の規制監督、帯域割り当て大統領が任命、議長は大統領が使命、上院の承認、5人のうち3人まではおなじ政党でよい
 英国Ofcom(コミュニケーション・オフィス)、電気通信、放送の規制、監督、許認可、苦情処理、市民の利益促進、競争による消費者の利益促進、複数制(多様性)確保、不公平な取扱、プライバシーの侵害からの保護、公共サービスの監視。一部公選制
 フランスCSA(メディア高等評議会)、多様性の確保、規制の制定、周波数の割り当て、9人の委員、大統領と、上下両院それぞれ3名
 韓国、放送通信委員会、大統領任命の5人の委員。
ドイツ、州ごとの放送委員会、中央集権禁止。全国放送は州放送局の合議、14州の各委員会は主な社会団体の代表、そのほかにKEF公共放送財源委員会がある。
 日本BPO 放送倫理番組向上機構
 放送倫理、人権、青少年について市民、視聴者の意見を受理して審理、勧告。放送倫理委員会、放送人権委員会、青少年委員会がある(放送局の管理監督は総務省)
 資料6、EU報道の自由憲章
 1. 報道の自由は民主主義社会に欠かせない。報道の自由、政治的、社会的、文化的多様性を守ることは政府の責務である。
 2. 検閲は認められない、すべてのメディアの独立性は守られる、メディア、ジャーナリストを一切の刑罰、抑圧の対象にしてはならない。独立性を妨げる立法は制定してはいけない、新聞、出版、オンラインメディアは政府免許の対象にはならない。
 3. ジャーナリストとメディアの、自由に集まり、情報や意見を広げる権利を侵してはならないし、処罰の対象にしてはならない。
 4. ジャーナリストの情報源は保護される、ニュースルームやジャーナリストのコンピューターを監視し盗聴し、操作して、情報源を特定することは編集内容の秘匿を侵すもので認められない。
 5. すべての国はメディアがあらゆる法律や権威から保護されて、その任務を果たせるよう十分な保障を与えるべきだ。特にジャーナリストや、メディア従業員を精神的、身体的ハラスメントから保護することが求められる
 6. 政府または政府関係機関はメディアの経済的存立を侵す行為を行ってはならない。経済的制裁を加えることは認められない。民営会社のメディアはジャーナリズムとしての自由を尊重しなければならない。会社はジャーナリズムの内容についてコマーシャル的要素をミックスするようなことをしてはならない。
 7.国あるいは国の支配下にある機関はメディアやジャーナリストの情報へのアクセスを妨げてはならない。情報を提供し、ジャーナリストをサポートすることは国あるいは国に関連する機関の義務である。
 8.メディアとジャーナリストは、すべてのニュース、情報源に妨害されることなくアクセスする権利を持つ。それは海外のジャーナリストについても同様である。レポートにあたって海外ジャーナリストはビザ、クレデンシャルその他の必要な許可文書を与えられる。
 9.どの国の市民であっても、国内、海外メディアと情報源に自由にアクセスする権利がある。
 10。政府はジャーナリズムを職業として志望することにいかなる制限も設けてはならない。
 資料7、英欧米の視聴者団体
 アメリカ、プロメテウスキャンペーン、1998年誕生、市民グループの周波数免許獲得が目的。(デジタルで空いたLPFM)、労組、教会、消費者、平和などさまざまな市民組織は、2010年周波数免許に成功
 英国、Voice of Listeners and Viewers、1983年誕生、会員1500人、BBCの広告導入拒否がきっかけ、番組監視
 英国 CPBF新聞放送の自由キャンペーン1979年発足、フォークランド紛争、北アイルランド紛争、湾岸戦争、イラク戦争で報道の自由擁護、政府干渉阻止。会員、2000人、労組472、750万人
 ヨーロッパ、EURALVA,全欧リスナー、視聴者会議。1996年ロンドンで結成。デンマーク、フランス、ポルトガル、ドイツ、ハンガリー、ノールウエイ、スペイン、スウェーデンなど、ヨーロッパ報道の自由憲章を守る。
posted by media watcher at 12:22| Comment(0) | TrackBack(0) | 隅井孝雄のメディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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