2015年06月12日

サンデル白熱教室で「公共放送」を討論、国益と真実の報道についても議論された。出席は世界各国の公共放送担当スタッフ27人が参加

 5月23日、NHKの「マイケルサンデル白熱教室」が「公共放送の未来を考える」という特集を放送した。出演したのは折から東京で開かれた「世界公共放送会議」に参加した、各国公共放送の制作者達27人。ゲストに民放で番組を作るテリー伊藤と、インターネット動画共有サイト「ニコニコ動画」の杉本誠司が加わった。
 テレビとインターネットの融合は好ましいことなのか、国民の帰属意識を高めることは公共放送の役割なのかが主なテーマだった。前半のテレビ環境の変化は全体として文句なく、好ましい、あるいは必然の変化であって、公共放送が知恵を集めて対応するという意見が大勢だった。
 一方公共放送の立場から論じた、国民、国家、戦争、五輪などについては興味ある多角的意見が聞かれた。サンデル教授があげた過去のサンプルの一つは、ケネディー死去報道や月着陸で生じた視聴者間の一体感、歴史の共有感であった。共同体意識をはぐくむことが公共放送の役割、公共放送はそのインフラだという意見が出たが、それはナショナリズムにつながるという異論が出た。公共放送は国民の接着剤であるとしてもそれは多元的でなければならない、との意見はヨーロッパ系の公共放送の制作者から数多く出された。
 さらにサンデル教授がケーススタデーとしてアメリカのベトナム戦争の報道、BBCのイラク戦争の報道で政治権力と対立した問題を取り上げた。この場合真実を報道するという点で意見の違いはほとんどなかったが、もし国民全体が「戦争」を支持した場合は複雑な問題が存在することも明らかになった。国が求めるもの、人々が求めるものの報道ではなく、あくまでも真実がどこにあるのか、真の公共の利益がどこにあるかを見極めるという役割の重要性が主張された。
 この番組の放送をしたNHKでは会長自体が「国の利益」重視するという発言を繰り返ししている。そのことは番組の中で語られなかったが、興味深い発言があった。それは出演者の一人であるNHKの制作者の「上層部の覚悟が必要だ」と発言だった。間接的なNHK上層部への批判と受け止めることができるだろう。この発言がきっかけで、他国の公共放送でも一部に自主規制が見受けられ、それが元で視聴者が不信感を持つ場合があったことも報告された。
 インターネットとテレビ報道の共存はもはや目新しい問題ではない。しかし戦争やオリンピックで国益をどう考えるのかが依然として問題が残ったままだ。オリンピックでも、サッカーでも国の利益ではなく、国境を越えた見方で伝える事が必要だと、私は強く思った。
 サンデル教授は番組の最後に「もし国民の大多数が賛成する戦争が起きた場合、BBCはそれでも"我が軍"と言わなくていいのか」と問いかけ、しかし答を求めず、「人々の要望に応える以上の目的が公共放送にはある、視聴者は単なる情報の消費者ではない、民主主義の市民だ」と締めくくった。 
 NHK籾井会長はこの番組をおそらく見てはいないと思う。
posted by media watcher at 15:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 隅井孝雄のメディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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