2015年03月04日

報道と政権の摩擦激化、NHKワールド掌握、報道ステーションに外務省抗議、NHK会長政府スタンス見て決める

以下の記事は「宣伝と組織」(機関紙協会京滋) 2015年3月号に掲載されたものです。 隅井孝雄
 
 世界への発信も政府の手が
 「イラク・シリアの難民支援、トルコ・レバノンへの支援をするのは、ISILがもたらす脅威を少しでも食い止めるためです。地道な人材開発、インフラ整備を含め、ISILと戦う周辺各国に総額で2億ドル程度の支援をお約束します」。
 これは安倍首相が中東歴訪の初日の1月17日、エジプトで行った演説だ。この演説は日本国内では放送されなかったが、NHKの国際放送「NHKワールド」が世界に放送したことから、ISIS(イスラム国)の目にとまることになった。湯川遥菜さんと後藤健二さんの2人の日本人人質事件につながったという見方が多い。
 総務相が最近発表した「テレビ国際放送に関する実施要請」によると、拉致問題など邦人の保護に加え、国の重要な政策全般についても、政府はNHKに放送を要請できることとなった。「NHKワールド」は国の広報宣伝放送になる。エジプト演説も、日本の重要な政策を表明するものとして、国際放送されたということができよう。

 「報道ステーション」にも政府からの批判
 「安倍首相の中東歴訪や、スピーチ内容について外務省内部に異論があった」、とのテレビ朝日「報道ステーション」(2月2日)に対し、外務省は2月3日報道を訂正するよう文書で申し入れを行った。
ニュースでは「パリでテロがあった直後の中東訪問には危険が付きまとうのではないかという意見が一部にあった」、「イスラム国の脅威と戦うという文言は官邸サイドが付け加えたのではないか」という指摘に対し、外務省は事実と異なると主張している。NHK、朝日新聞と続いた政府のメディアへの攻勢が今度は「報道ステーション」に向かうのではないかという観測も一部に出ている。
 原発報道、歴史認識、集団的自衛権、人質問題など番組内での発言について、与党関係者からの批判的コメントが、テレビ朝日にたびたび寄せられている。放送中に官邸から抗議めいた電話がかかることもあったという。テレビ朝日のニュース番組が膝を屈することなく、毅然として報道の使命を全うして欲しいと願う。

 「政府のスタンス」を見てから決める?
 2月5日NHK籾井勝人会長は記者会見で「戦後70年にあたって、従軍慰安婦問題をどのように取り上げるか」問われた。これに対して、籾井会長は「政府のスタンスが見えていない。取り上げて放送するのが妥当かどうか慎重に考えなければならない」と答えた。番組の内容や放送についての判断が、政府によって左右されることを意味するとして、会長発言は問題改めて問題となった。

 2月1日安倍首相は施政方針演説で「憲法改正に向けた国民的論議を深めよう」と呼びかけた。2月16日には集団的自衛権を行使のため中東ペルシャ湾に自衛隊が派遣されることもあると明言した。すでに紅海の入り口にあたるジブチ(イエメン)には自衛隊の拠点があり、27年度予算で哨戒機の配備など増強計画がもりこまれた。政治が大きく動いている。
 メディアが姿勢を正して、流れに向き合うことが必要だと痛感させられる。

注記
イスラム国をめぐっての表記がまちまちです。私はISIS(Iraq Syria Islamic State)としています。冒頭のISILは安倍首相が使っている表記です。
posted by media watcher at 21:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 隅井孝雄のメディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
Media watch.gif

隅井孝雄のメディア・ウォッチブログ