2007年02月19日

グラミー賞、ディキシー・チックス五冠、ブッシュへの抵抗、ラジオからの締め出しから4年、言論の自由の勝利を誇る

 隅井孝雄のメディアウオッチ No. 0707(通算144)
 グラミー賞、ディキシー・チックス五冠、ブッシュへの抵抗、ラジオからの締め出しから4年、言論の自由の勝利を誇る

212日ロサンゼルスのStaples Centerで開かれた49回グラミー賞は、音楽業界を興奮させるに十分だった。すでに髪の白くなったプロテストソング伝説の女王、ジョーン・バエズが「三人の勇気ある女性です」とディキシー・チックスDixie Chicksを紹介すると会場の観客は総立ちになって拍手した。そしてリードヴォーカルのナタリー・メインがI’m not ready to make nice, I’m not ready to back downと唄いだした。良い子になる気になれない、あやまるなんて気にもならない・・。
ディキシー・チックスは2003年イラク戦争の直前、ロンドンのコンサートでブッシュ大統領を批判したカントリーグループである。ラジオ局が彼女たちを締め出し、CDをトラクターで踏み潰したり燃やしたりするキャンペーンも展開された。しかし彼女たちは一歩も引かずに演奏活動を続け、今回のグラミー賞で5つのノミネートすべてで受賞、特に三大大賞といわれる歌曲大賞、アルバム大賞、レコード大賞を手にした。もらわなかったのは新人賞だけという快挙である。
今回のグラミー賞の中継放送(CBS)は視聴者数2000万人を超えた。昨年の1700万人と比べると300万人も増えた。グラミー後、受賞したアルバムTaking the Long Way、シングルNot Ready to Make NiceなどはiTuneやオンライン・音楽でダウンロード一位を記録、CDの売れ行きもなんと830%増という。音楽業界は思いがけないディキシー・チックスブームである。
イラクの混迷、ブッシュ大統領の支持率低迷がディキシー・チックスの追い風になっているが、アメリカの音楽業界の亀裂がさらに深刻になっているという事実もある。昨年11月に開かれたカントリー・ミュージック・アワードはディキシー・チックスを完全に無視、新しいアルバムTaking the Long Way190万枚も売れているのに締め出された。カントリー主体で隠然たる勢力を誇るナッシュビルの音楽業界と、ニューヨークやロサンゼルスの音楽関係者が多数を占める音楽アカデミー関係者(3600人がグラミーの投票権を持っている)との軋轢が心配される。
カントリー・ミュージック・アワードに締め出されたディキシー・チックスは「カントリーファンを相手にはしない。リーバ・マッキンタイアーやトビー・キースと一緒にしないでほしい」と発言している。トビー・キースにはイラク戦を支持した愛国歌がある。
ディキシー・チックスの三人は本拠をナッシュビルからロサンゼルスに移して、今回のアルバムを制作した。音楽業界にはテキサス難民という言葉も生まれた。曲もカントリーというよりはロックに近いものになっている(Rock Leaning Country) ことが、かえってファンの幅を広げ、音楽性を高めているとも見ることができる。
アメリカのラジオ局は依然としてディキシー・チックスをパージしているが、受賞スピーチで受賞した三人は「われわれと皆さんが言論・表現の自由を行使した結果の受賞だ」とコメントした。
バッシングに屈せず「後悔はしていない、黙ってもいない」(Taking the Long Way)という思いを込めた彼女たちの歌はイラク戦争に倦んだアメリカ社会の気持ちを率直に代弁するといえよう。だが政治的メッセージ、イデオロギーではなく、音楽性が極めて高く、心を打つ曲だという高い評価が音楽の専門家の間で強いこともまた事実である。

http://www.nytimes.com/2007/02/12/arts/music/12gram.html?ex=1172034000&en=9557099416a324ee&ei=5070

posted by media watcher at 20:26| Comment(1) | 隅井孝雄のメディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
初めて書き込み致します。sumii prof.いつも拝見させて頂いております。ディキシーチックスなるバンドが音楽界の新人賞以外の賞を獲得したというところは快哉という思いが致しました。そのバンドが2003年にブッシュ大統領のイラク戦争に強く警鐘を鳴らし、批判をぶつけたという事実故に尚更です。現在、既に米軍だけで瓦解したWTCビルディングの犠牲者を上回り、イラク国民であれば十数万人の犠牲者は出ています。今日ではシーア派、スンニ派の部族間争いにも拍車がかかっています。ラジオ放送局はいつまで、彼女達(ディキシーチックス)をパージし続け、オミットできるのか。パラドキシカリーに国民の人気と、ランキング・チャートでは上位に位置付けられているにも係わらず‥。また、弾劾するような歌詞、曲を作るバンドが、内容もさることながら、メロディーが良いと専門家に高く評価されていることに、嬉しくもあります。真実の眼を持ち、気付き始めるのは当然ですがいつも国民が早いと感じます。(気概、潮流的なもの)そういった、音楽の流行から、平和への希求が高まれば、良いことだろうなとも感じます。どんな音楽なのか、機会をみて、バージンメガストアにCDを聞きに行こうと考えています。
Posted by oshimi takashi at 2007年02月22日 03:50
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