2013年01月05日

選挙報道で多用された世論調査。だが電話調査(RDD)と出口調査の問題が多い。乱用は謹むべきだ。

昨年暮れの選挙では多くの政党が林立した。だがテレビ、新聞などの報道が自、公、第三極(維新)に集中し逆に選択肢狭める結果となった。手軽な電話調査を元にした予測が横行、選挙当日も、出口調査で各党の当選数を競う報道が目立った。RDD(ランダム・デジタル・サンプリング)など統計学的用語を使った調査結果は、元々きわめてずさん。しかしそれが世論誘導という結果をもたらした。
以下の記事は「宣伝と組織」(機関紙協会京滋支部発行)の2013年1月号に掲載された。興味ある方はお読み下さい。


12月16日投票日の夜、私は三条寺町にあるコミュニティーFMラジオのスタジオにいた。この局で報道インタビュー番組を放送している中野有さん(龍谷大教授)と、街づくりの現場からの生放送を得意とする山田章博さん(市民空間きょうと)などと一緒に、選挙結果とこれからの日本を語り合った。日本の目を世界に広げること、次世代を担う若者たちの政治参加を促すことが必要であること、選挙制度を抜本的に変えて自由化し、インターネット活用に門戸を開くべきことなど熱心に討論された。小さなラジオ局の真摯な討論は傾聴に値すると私は思った。国やスポンサーから一歩離れ、市民の側に身を置くからこその番組編成であろう。

わたしたちの放送はNHKや民放の開票速報と並行して行われた。午後八時ちょうどにテレビは各党の当選者数を一斉に速報、その後も「開票率は0だが当選」などと伝えていた。特別放送は午前零時過ぎまで続いたが、選挙民から見れば結果のわかった茶番だといわれても仕方のない状況であった。
今回は、政党の数が急増したことを理由として、大手メディアの世論調査が頻繁に実施された。選挙日の数日前私の家の電話が鳴った。受話器を取った私は、図らずも選挙の調査対象になった。どの党を支持するか、誰に投票するか、などの後、調査員は安部、野田、石原の3人の名をあげて次の総理を問うた。私は「誰もふさわしいと思わない」と答えたのだったが、世論調査が世論を誘導するために使われていると強く思った。

電話調査(RDD=ランダム・デジタル・ダイアリング)は無作為に選んだ電話番号による調査で、新聞とテレビ各局で盛んに使われている。面接聞き取り調査比べ、時間も手間も経費も少なくてすむ。NHKは解散直後の11月19日と、公示直前の12月3日の2回電話調査を行っているが、二回目の場合調査対象は4042人、回答はそのうちの66%2678人に止まっている。かける電話は日中の固定電話だけ。これでは調査に偏りがでる上、調査サンプルのバランスもとれない。ケータイは無視され、仕事に出ている人も、学生も無視され、それが「世論」になる。
安易な世論調査や、ギャンブルのような出口調査決別して、市民の討論の積み重ねを選挙に反映させることが必要だろう。

安部晋三率いる自民党が大勝した、というニュースに最初に反応したイギリスBBCテレビは「日本、急速右展開(Japan sharp turns right)」と報じた。日本の今後が、世界の安全保障、安定に危険な要素だという見方は、アジアはもとより、欧米を含めた世界各国の共通認識になっている。しかし、選挙中、選挙後を通じてこのような認識が日本国内で語られることはほとんどなかった。世界の中の日本のあり方こそが問われている。
(隅井孝雄)
posted by media watcher at 16:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 隅井孝雄のメディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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