2012年05月07日

水俣病公式確認から56年、ETV特集「花を奉る、石牟礼道子の世界」が水俣病の本質を伝える。

水俣病公式確認から56年、ETV特集「花を奉る、石牟礼道子の世界」が水俣病の本質を伝える。

水俣病が公式確認されて56年。5月1日、水俣市で慰霊祭が開かれた。患者、遺族はもとより、国からは細野環境大臣も出席した。これまでに認定された人は2273人、多くがすでに亡くなっている。現在認定を申請中の人は57000人に上り、そのほかにも未申請の潜在患者の数も多い。国は申請の期限を7月末とくぎり、しかも一時金の支給で終止符を打とうとしている。慰霊祭に参加した細野環境大臣は「解決に全力を挙げる」と述べたが、患者や支援者は、国に対する批判を強めている。

ところで、今年2月26日NHKETV特集「花を奉る」という番組が放送された。半世紀にわたって水俣病と向き合った石牟礼道子が大震災を体験して改めて水俣を見つめ直した番組である。優れた番組なのでギャラクシー賞に推挙した。以下はその番組評である。
月刊放送批評誌「Galac」2012年5月号に掲載された。

 番組評 ETV特集 「花を奉る、石牟礼道子の世界」 2012年2月26日放送

苦界浄土の石牟礼道子。この番組は半世紀にわたって水俣病と向き合い,水俣の海の自然と生きた彼女の人生をたどりながら、彼女と共に近代文明と国家を深く考えた。
冒頭石牟礼道子が2011年4月東北大震災と福島原発事故の際筆を執った詩作が紹介された。[現世はいよいよ地獄とは言わん,虚無とは言わん。ここに於いてなお一輪の花の力を念じて、合掌す」と彼女は詠んだ。
「チッソ」は近代工業の先端と謳われた。55年の歳月を隔てて「原発」は人類の未来を切り開くと喧伝された。その二つを重ねたこの番組の構成は重く私たちの心を打つ。番組そのものでは津波やフクシマのことが語られるわけではない。あくまでも水俣の歴史を振り返り、水俣への思いを石牟礼道子自身が語る。しかし見る者は一年前に私たちを襲った厄災を重ねて看る。「言外に語る」とはこういうことを言うのだろうか。
水俣病特別措置法の申請期限7月末という節目での作品でもある。認定されない数多くの患者をも救済すると国は言うが、一時金の支給ですべて終止符を打とうとするものだとの強い批判がある。全面的救済を巡っての一種のキャンペーン報道という側面もこの番組にはある。だが根底にはそれを超えた国家に対する疑問が横たわっている。石牟礼道子の心の中には、敗戦を境に180度転換した体験に起因する不信の感情がある。それは「フクシマ」を経験した今の日本人の共通の心情でもあるだろう。
画面はパーキンソン病を患う石牟礼道子の表情をクローズアップで写し出し続けることによって、怒りの念と自然に対する憧憬の二つを同時にとらえた。そして激しさをうちに秘めながらも、穏やかなリズムの流れの中で一つ一つ花びらを置くように描いた石牟礼道子の作品ありようを紹介した。長谷川勝彦のナレーション、上田早苗の朗読が、そのリズムを的確に表現して、「花を奉るような」詩的世界を再現しているように私には思えた。(隅井孝雄
posted by media watcher at 17:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 隅井孝雄のメディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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