2011年12月16日

「反プーチン」の動き、ネットで上昇気流、大集会やデモロシア全土で次々、旋風の中心にいるブロガー、アレクセイ・ナヴァルニー

以下の記事は「ジャーナリスト」645号、2011年12月25日付、に加筆したものです。

モスクワで5万人集会、「プーチンはロシアにいらない」の声、谺する
モスクワの中心部、クレムリンを望む川沿いのポロートナヤ広場で、12月10日史上空前と見られる5万人のデモがあった。参加者は口々に選挙に不正があったとしてやり直しを求め、「プーチンはロシアにいらない、彼は盗人だ」などと叫んだ。不正現場の映像を国営放送は一切報じなかったが、多くの人がインターネットで視聴している。
12月4日の下院選挙でプーチン首相が率いる「統一ロシア」の得票率は46.5%だったが議席で過半数。人々はこの数字を信用していない。モスクワ市内での与党の得票率は23.5%だったというイギリスメディアの報道もある。
今回の「反プーチンデモ」にはiPadやスマートフォーンを手にした数多くの若者が参加していた。これには背景がある。ロシアでのツイッター利用者は若者を中心に6000万人とも1億人とも言われている。この若い世代に強い影響を与えている人物の一人にアレクセイ・ナヴァルニーという弁護士がいる。彼の姿は会場にはなかった。
選挙翌日の12月5日、一連のソーシャルネットワークが呼びかけて8000人もの民衆が自然発生的に赤の広場に集まった。その会場でナヴァルニーは警察に逮捕され15日間の勾留が言い渡された。以前から現政権の腐敗、汚職をブログやツイッターで流し、一般の市民に強い影響力を与えている。ツイッターのフォロワーは135,000人、ブログの読者は6万人に達する。彼は現政権を「詐欺師と盗人の集団」と呼んでいるが、それが10日の集会のスローガンともなった。プーチン首相とメドジェーエフ大統領の地位を入れ替える取引がさらに人々の怒りを買っている。
一連のニュースを見聞きして私は若者を中心とした民衆の怒りが現実の政治にインパクトを与える時代に突入しつつあると思う。エジプトなど中東諸国では民衆が死を賭して圧政と腐敗に対抗している。アメリカでは富の90%を独り占めする金融街の強欲を非難する長期に座り込みがあった。日本では脱原発をめざして東京明治公園に6万人(9月19日)、福島集会に1万人が(10月30日)集まった。私の見たオーストラリアABCは「日本のデモで警備の警官より参加者の数が多かったのを初めて見ました」と驚きをあらわにして伝えていた。このような民衆の立ち上がりの中でツイッターやフェースブックなどのインターネットメディアが大きな力を発揮しているのも新しい状況の一つだ。
モスクワの5万人のデモは日本の新聞が7段の記事(朝日新聞関西版)で報道しているのに、日本での原発反対デモの記事は目立つような扱いはなかった。歴史のうねるような流れに、目をつむっているわけにはいかないのではないか。

 アレクセイ・ナヴァルニー、反体制の旗手、ブログに大きな反響
ところでブログでロシア政治に旋風を起こしているアレクセイ・ナヴァルニーとは何者なのだろうか。
ワシントンポスト(12月7日)によるとロシアのブロガー、アレクセイ・ナヴァルニーは現在のロシア政治の中で最も興味深い人物だという。BBC(12月6日)はこの5年来初めてのプーチンと正面から対決できる政治指導者が出現したという。
彼はここ数年ブログで政治の腐敗を問題にし続けている。議会選挙直後、彼は警官の支持に従わなかったとして勾留されたが、それは逆に彼の名声を高める結果となった。エコ・モスコヴィ・ラジオのニュース編集長、アレクセイ・ヴェネディコフは、逮捕は体制側の政治家にとっての失策であるとしている。逮捕によって、ネット上のヒーローから一挙にロシア全土のヒーローになったのだという。
ナヴァルニー35歳。商法の専門家で弁護士だが、2008年現政権の腐敗と専制に声を上げるブログを立ち上げて、ネット上の英雄となった。現在彼のブログは6万人の読者を持ち,ツイッターのフォロワーは13万人に達する。彼は政府および権力と癒着した大企業(ガスプロム、ロスネフト、トランスネフト、VTB銀行)を腐敗追及、大衆の喝采を浴びている。特に彼の名を高めたのは、国営石油パイプライン最大手のトランスネフト社の40億ドルに上る不正支出を、調査報道の手法で暴露したことである。BBCの報道(12月6日)によるとこの問題ではおよそ10万件の反響が寄せられ、影響力のある主要独立メディアが競って報道したという。また2010年にはドイツの自動車メーカーダイムラーが政府に賄賂を送ったことを暴露、ダイムラーに認めさせた。また健康省の高官と民間企業の癒着も暴いて、辞任に追い込んだ。
オンライン上の人気に対応するため、彼は最近Ropsi.infoというウエブサイトを新たに開設した。読者からは多額の基金が寄せられており、腐敗糾弾の専門サイトとして、法律専門家の専任の調査員を置いた。読者からの情報提供が続々と寄せられ、彼のキャンペーンの重要な武器になっている。
ナヴァルニーは今回の議会選にあたってプーチンの政党「統一ロシア」を「ゆすり、たかり、盗人の政党」と名付けて批判、このキャッチフレーズは大衆の反プーチン運動のスローガンとなった。「統一ロシア」がマニフェストを反故にしていることを描いたYouTubeの映像は180万回の視聴を記録した。
ナヴァルニーのスローガンに同調した小政党「正義ロシア党」はこれまで4-5パーセントだった支持率を13%伸ばした。他の野党勢力もネットを席巻するナヴァルニーに連携する意向を見せている。また、同じようにネット上で活躍している著名ブロッガー、ルステム・アダガモフ、オレグ・カシンらとも共同戦線を組むが、特定の政党に所属する意向はないという。ある左翼政党からの党首に迎えたいといオファーも断り、あくまでも独立して、行動すると宣言している。
posted by media watcher at 17:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 隅井孝雄のメディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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