2011年05月21日

見直されるラジオ、コミュニティーFMの大活躍、手書き新聞、東日本大震災が教える情報伝達の原点

 見直されるラジオ、コミュニティーFMの大活躍、手書き新聞、東日本大震災が教える情報伝達の原点

 東日本大震災を機にラジオが見直されている。
地震と津波で一挙に町や村が崩壊、すべての家財道具、公共インフラが流された後、人々は情報手段を失って呆然とした。新聞は来ない、テレビや電話も流された、ケータイも基地局が倒壊した。停電も加わり唯一残されたのはラジオだった。
 東北三県のNHKラジオ、民放ラジオ(AM、FM)各局は不眠不休で安否情報、特番を報じた。普段なじみのパーソナリティーに対する信頼感、安心感は多くの被災者の安全につながり、心の安らぎをもたらすものとなった。これらのラジオ局の中には、被災地に的を絞った「災害放送局」を運営し、ユーストリームで同時放送するなど、活躍を続けた。
 注目されるのは市町村単位で放送を出しているコミュニティーFM局の存在だった。ラジオ石巻は局舎が被害を受けてシステムダウン、非常用バッテリーにたよって放送を続けた。岩手県宮古市ではコミュニティーFMの開設準備中だったが、津波の後3月20日に急遽災害FM局として電波を出し、市民の目となり耳となった。仙台では外国人の問い合わせの殺到した仙台国際交流協会が急遽「Date Fm」を開設、英語、韓国語、中国語などでライフラインの情報を伝えた。災害地のラジオがユーストリームで同時放送し、またブログでラジオとインターネットを橋渡しするなどの活躍ぶりも目立った。
コミュニティーFMは出力が20ワットに制限されているが臨時災害コミュニティーFMに対して総務省は100ワットを認可したのは、被災地にとっての朗報だったといえよう。
 普段ラジオを聞く習慣が少なくなっていたことも手伝ってラジオ受信機の数が圧倒的に足りなかった。震災直後ラジオ、文化放送、ニッポン放送などが1万3000台のラジオ受信機を集めて被災地に送った。関西では震災の経験のある神戸のコミュニティー局(FMわぃわぃ)が音頭をとって、5000台のラジオを送るキャンペーンを展開、京都三条ラジオカフェが集めた100人の激励メッセージCDと合わせて、被災地のラジオ局に寄贈した。
 日本ではラジオが衰退しているといわれてきた。しかし空中波を受信さえすれば手軽な受信機で情報が入ってくるラジオの有用性は、今回の災害で実証されたといえるだろう。最近ではラジオをインターネットでも簡単に聴けるラジコ、コミュニティーFMの「サイマルアライアンス」などの存在で、スマートフォンなどで簡単に聞けるようになったこともラジオの世界を広げた。だが大切なのは情報の大本はどこにあるかということだ。
 新聞で話題になっているのは石巻の地域新聞石巻日々新聞です。3月11日輪転機が浸水、停電や断水も続き、6人の記者のうち3人と連絡がつかず、発刊できなくなりそうになりました。ろうそくの明かりで相談し残っていた新聞用紙に油性ペンで記事を作った。近江弘一社長が一部書き上げそれをみんなが書き写した。6部作って次の日避難所やコンビニに張り出した。手書き新聞は17日まで6日間続き、その後パソコンで新聞を作り、輪転機が回ったのは3月19日からだった。
 手書き新聞のことがアメリカの新聞ワシントンポストに載り、世界的な注目を集めたことから、ワシントンDCの新聞博物館ニュージアムの依頼を受けて展示が行われている。ニュージアムでは「歴史を超えたメッセージを発信した」と賞賛している。
 実はこの新聞、戦時中情報局の一県一紙の抵抗したため用紙の配給が止められ、記者たちが手書きして配ったという歴史がある(5月14日毎日新聞)。
 気仙沼市の三陸新報も停電で発刊ができなくなり、車のバッテリーでコピーしたパソコンのA4版新聞を避難所などに配った。輪転機で発刊したのは4月に入ってからだ。
ラジオといい、手書き新聞といい、メディアの原点が人々の心を打っていることは、インターネット社会と言われる中でひときわ注目される。
 ラジオは1895年のマルコーニの無線通信実験に源流がある。石巻日日の手書き新聞も世界に注目された。原点に立ち返ってみる必要を今回の震災は我々に教えたのではないか。

 注 この記事は2011年5月25日付「リレー時評」 ジャーナリスト第638号(日本ジャーナリスト会議発行)を加筆したものである。
posted by media watcher at 16:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 隅井孝雄のメディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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