2010年12月12日

私のテレビ評 日本農業に光は差し込むのだろうか、

隅井孝雄のメディア・ウオッチ No. 1010 (通算195)
 
 2010.12.12


 以下の記事は「Gyalac ( 放送批評懇談会)20111月号 201116日発行

ギャラクシー賞テレビ部門推奨(ポイント欄)に掲載された

 

私のテレビ評 日本農業に光は差し込むのだろうか、

 「ガールズ農業、女子から始める農業改革」(102日、山形放送)

 「コメは誰が守るのか、モデル農村大潟村の選択」(1018日、秋田朝日放送)

 「なぜ希望は消えた?〜〜あるコメ農家と霞が関の半世紀」(103日、ETV特集)

 の三番組を見て

 

そば好きの私だが、先日なじみのそば店のご主人と話をしていてびっくりした。そばの自給率が21-23%前後を低迷しているという。信州や北海道の手打ちそばを食しているつもりだったが8割が輸入ものだ。農水省のページを繰ってみると、天ぷらそばのイラストがあった。平成17年のデーターだが、みりん、かつおだし、ネギが80%−90%台はいいとして、シイタケ54%、そば21%、しょうゆ0%と続く。天ぷらそばのカロリー自給率全体は20%だ。折からTPP(環太平洋パートナーシップ)が動き始めた。そうなれば自給率ほぼ100パーセントの米も危うい。

 10月は収穫の秋。農業に関連するドキュメンタリーが目白押しに並んだ。「ガールズ農場」(山形放送)、「米はだれが守るのか」(秋田朝日放送)、「なぜ希望が消えた、あるコメ農家と霞が関の半世紀」(ETV特集)3本を見た。

 「ガールズ農場」は東京の大学で教員を目指していた農家の次女が故郷山形に戻り、若い女性だけで会社形式の「ガールズ農業」を立ち上げた、という話だ。大卒女子三人を公募、ミニトマト、ズッキーニなどを育てる。それだけでも結構なドラマが展開するが、それをスパーや自然食サラダバーに自分たちで売り込む。流通にも乗り出すわけで、何から何まで新しい感覚だ。農業の明日の形が見えるかなという期待で番組を見た。しかしどうも多くの局のワイドショー、ニュースコーナーにも頻繁に出てくる話なので、調べたら、野菜レストランやサラダバーを経営する農産物の流通ベンチャーKファーム(あえて社名は記さないが)の宣伝キャンペーンの一環だということが分かった。だまされた、と一瞬思ったが、それはそれで若い世代が新感覚で農業生産や流通に取り組み始めた動きには注目してもよいと思い直した。

「米は誰が守るのか」は長年の国の農業政策に翻弄され続けてきた大潟村の取材だ。減反政策に従った農家と、自主作付けして販路を開拓してきた農家の抜き差しならない対立に今変化が生まれている。国が減反農地に主食用以外の米、つまり米粉などの作付けを認めたからだ。農政の大転換である。米でうどんやパスタを作る、食生活も転換する。コメ農家が米粉加工、販売ビジネスを始めている。輸入小麦に対抗できる。政治が初めて農業の現状を変える方策にかみこんだ初めてのケースとして注目される。

「なぜ希望が消えた、あるコメ農家と霞が関の半世紀」はコメ政策の歴史をたどる長大なドキュメンタリーだ。主人公は自ら農家として苦闘を続け、そしてその歩みを博士論文にした佐藤章夫さん。そして農政官僚三人への長時間のインタビューが加わる。日本の農業政策が迷走を続け、ついに農業回復の糸口を見つけ得なかった悔恨の歴史の総括である。

新展開するかもしれない日本の農業について国民的論議を起こすステップになるような番組がいくつも見られたことは、この先希望の光がある、ということではないか。(隅井孝雄)

  
posted by media watcher at 15:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 隅井孝雄のメディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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