2010年11月16日

テレビ番組評 NHK ETV特集、敗戦とラジオ、放送はどう変わったか 

隅井孝雄のメディア・ウオッチ No. 1008  (通算193)
 
 2010.11.16

テレビ番組評 NHK ETV特集、敗戦とラジオ、放送はどう変わったか 

2010815日放送 117日アンコール     

 

この番組は815日、第二次大戦終結の特集として放送された。反響が大きく3ヶ月後の117日に再放送された。日本の放送の現状に対する批判を内包した優れた番組である。

以下の批評は「GALAC201011月号(放送批評懇談会)2010年にけいさいされた。

 

テレビが生まれる前、ラジオはコミュニケーションの王座にあった。占領軍はラジオを戦後日本民主化の推進役として期待し、重視したことは想像に難くない。少年だった私は「カムカム英語」や「鐘のなる丘」に耳を傾け、通りかかった駅前で「街頭録音」のマイクを向けられたことを記憶している。しかし今改めて、「真相はかうだ」、「日曜娯楽版」などを聞くと、占領軍の思惑や、日本政治の動向の中でもまれたNHKの右往左往する困惑が透けて見え、しかも当時のさまざまな問題が現在もなお尾を引いていることをうかがい知ることができる。

番組は人気のあった「日曜娯楽版」とその担当者丸山鉄雄を縦糸とし、CIEの一員として番組つくりに協力したフランク馬場を横糸にし、当時NHKの現場にいた人々のインタビューを織り交ぜて進行する。「日曜娯楽版」など時代に正面から向かうラジオは占領軍の「民主化政策」という追い風を受けていた。しかし同時に占領軍批判は厳しい事前検閲にさらされていた。GHQとの連絡をとっていた職員やアナウンサーの証言でその実態が明らかにされている。朝鮮戦争中NHKが一部周波数を朝鮮半島向けの米軍放送に転用したという現場証言も初めて聞くものだった。

さらにこの番組では1946年(昭和21年)の放送ストライキと国家管理、組合幹部だった制作関係者の相次ぐ配置転換、そしてレッドパージなどが当事者たちの証言で語られた。NHK内部のこのような動きがNHK自体の手で問われたことはおそらくこれまでになかったのではないか。番組は「放送の公共性を問う動きは戦後の新しい流れだったが今も私たちに問われている」とし「それは時の政府の御用放送という意味合いのものではない」という丸山鉄雄の言葉で締めくくられた。

NHKの職員たちの証言、録音された番組の再生、当時の放送台本などを積み重ねて、戦後のラジオ放送を見つめなおした。そして敗戦と共に新しくもたらされた「公共性」という概念が変質した過程を検証することによって、NHKのありかたを問い直したいという制作者の切実な思いが伝わってきた番組だった。(隅井孝雄)

 
posted by media watcher at 12:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 隅井孝雄のメディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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