2010年08月28日

「ザ・コーヴ」のディック・オバリー、テレビシリーズ「ブラッド・ドルフィン」の制作始まる

隅井孝雄のメディア・ウオッチ No. 1006 (通算191)
 2010.08.27
 
「ザ・コーヴ」のディック・オバリー、テレビシリーズ「ブラッド・ドルフィン」の制作始まる 

ケーブル番組シリーズ「アニマル・プラネット」で放送

イルカドキュメンタリー「ザ・コーヴ」でアカデミー賞を獲得した元イルカ調教師ディック・オバリーがその続編と言うべき新しいテレビドキュメンタリーシリーズ「ブラッド・ドルフィンズ」の制作に入ったとアメリカのメディアが伝えた。ディック・オリバーは「ブラッド・ドルフィンズ」の撮影のため91日のイルカの解禁日に合わせて太地町入りする。

「水族館などへイルカを供給する売買行為を禁止させることを目的にしている」とオバリーはABCテレビに語った。今回の作品では日本だけではなく、生計を全面的にイルカに頼っているソロモン諸島の入り江の村も取材している。撮影班はイルカ以外の収入源を見つけて村人に提供しようとする活動家たちの動きも追っているが、事はうまく運んではいないようだ。

オバリーは「ザ・コーヴ」の成功で155カ国170万人のイルカ活動家が生まれたとABCのインタビューで語り、最終的にはイルカの捕獲そのものを禁止させたいと言っている。

新作「ブラッド・ドルフィンズ」はケーブル、衛星、ネット経由の動物専門チャンネルアニマル・プラネットで放送される。日本での放送開始は827日から。最初はこれまでに撮影済みのフィルムを編集したものが主体になるものとみられる。

 

「ザ・コーヴ」のシンポジウム(73日)、熱気こもった討論展開

ところで「ザ・コーヴ」についてのシンポジウムが73日京都シネマで開かれた。私自身「映画「ザ・コーヴ」の上映を支持する会・京都」に参加したことから、シンポジウムを企画し、当日司会を担当した。パネリストは元テレビ朝日ディレクター、奥村信幸、立命館大学産業社会学部准教授、助監督、生駒誠氏、グリーンピースジャパンの理事、細川弘明、京都精華大学文学部教授、神谷雅子、京都シネマ代表の4人。会場は約50人が参加、立ち見も出る盛況だった。作品については、映像のマジックで無理なつなぎ合わせが随所にみられるのはドキュメンタリーとしては失格だ、取材対象である漁民を最初から敵視し、日本の漁師をことさら凶悪に描いている、日本版で取材対象漁師にモザイクをかけたことがさらに凶悪度を高めた、日本のイルカ漁の歴史的伝統を無視している、水銀汚染のデーターの甚だしい誇張がある、など批判が相次いだ。その一方環境問題に詳しい細川教授からは「今の太地町のイルカ漁は伝統的漁法とは無縁だ。イルカビジネスに組み込まれている。捕獲したイルカの海外への販売を禁止し、伝統に立ち返るべきだ」と指摘した。

 

「イルカ水族館ビジネス」が元凶か?

私は司会していたため、意見を述べなかったがこの映画について次のような感想を持つ。

この映画はマイケル・ムーアなどが開発して成功したアメリカ流ドキュメンタリーの手法をフルに活用して制作されたことがアメリカでの評価につながったのではないかと思う。一言でいえば敵を設定し、それに肉薄する過程をカメラに収めながら、スリリングな結末を用意するという手法である。この映画でいえば敵は日本の漁師であり、官憲、役人ということになる。取材をめぐる小競り合いの後、深夜ひそかに隠しカメラを各所に設置するシーンを配置しスリルを盛り上げ、最後に血の海を大写しする。導入部分で多くの年代に知られる人気テレビ映画「わんぱくフリッパー」のエピソードが効果的に使われ、しかもわんぱくフリッパーの調教師自身が解説役をかって出る。「そうだったのか」と思わせるその手法が興行的なヒットに直結した。

ただ残念なのは作品が言及している「世界イルカビジネス、水族館ビジネス」が途中で消えてもっぱら太地町の漁師が悪役として前面に押し出されたことだろう。元凶は一頭1500万ドルで取引されるというイルカビジネスではないか。それを批判し、国際的な規制の網をかけることなしにイルカの真の意味の保護はあり得ないと思う。太地町の側も、高額のイルカビジネスには口を閉じ、「日本の伝統漁法だ」というのみだ。

 

中止運動は排外主義の“行動右派”「在特会」?

この映画の反対の急先鋒は(太地町の漁師を別にして)主権回復を目指す会=在日特権を許さない会、であった。彼らから京都シネマに寄せられた上映中止要請文を見ると「虐日映画「ザ・コーヴ」は反社会的毒物である」と断じている。明らかな排外思想と言ってよいだろう。そして上映中止に反対するジャーナリストは「毒物を「表現の自由」で売りさばく偽善であり、犯罪である」としている。彼らの運動の標的となった映画館「シアターN渋谷」、「シネマート六本木」、「シネマート心斎橋」などが相次いで上映を中止した。

こうした排外的傾向の広がりは放置できないものと私は考え、「上映を支持する会」に加わり、シンポジウムに参加した次第である。

在特会は「行動する保守」というスローガンを掲げ、これまで朝鮮人学校を標的に抗議活動を展開する一方、外国人参政権に反対する運動を繰り広げている。また一連の抗議活動をインターネットで生中継して賛同者をひろげている。810日京都府警は朝鮮人学校への抗議行動が威力業務妨害だとして在特会の幹部4人を逮捕した。

posted by media watcher at 17:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 隅井孝雄のメディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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