2009年09月08日

アメリカで波紋呼ぶ鳩山論文、だが冷静なオバマ周辺

 隅井孝雄のメディアウオッチ No. 0913(通算184)
  2009.9.8 

アメリカで波紋呼ぶ鳩山論文、だが冷静なオバマ周辺

 

 掲載に至った経過は? 予想もしていなかった鳩山事務所

日米関係についての鳩山発言が、アメリカで波紋を呼んでいる。いったい何がどうなっているのだろうか。

発端は827日のニューヨーク・タイムス電子版。首相になる可能性のある民主党の鳩山代表がアメリカをどう見ているかを紹介した記事だった。これについて朝日新聞は29日の電子版で「鳩山氏の寄稿論文が米国内で波紋を呼んでいる」と書いた。確かにニューヨーク・タイムスの記事では鳩山由紀夫のバイラン付きだ。誰でもが鳩山氏自身がニューヨーク・タイムスに寄稿したかと思う。だがこれは誤りだ。

火種のもとの鳩山代表の論文は「私の政治哲学」と題して月刊誌「Voice 9月号に掲載されたものだった。鳩山事務所ではこれを英語と韓国語に翻訳してホームページに載せた。この英語翻訳版を見たアメリカの通信社「トリビューンメディアサービス」が「グローバルオピニオン」というコラムページ用に、外交政策の部分を抜き出し、「新しい日本は米主導の市場原理主義を拒絶、東アジアの統合を模索」という見出しをつけて配信した。これを受けてニューヨーク・タイムスの電子版はOP-Ed欄に掲載した。OP-Edとは論説対抗面にあり、寄稿形式で個人名の主張が掲載されるのが習わしだ。

「グローバルオピニオン」は世界の主要な政治家、経済人などの要人の主張、考え方を常にフォローしているコラムスタイルの配信記事でアメリカの主要メディアが契約している。ちなみにニューヨーク・タイムスの本誌は契約していないが、電子版は配信を受けている。

記事には鳩山由紀夫氏の署名があり、文末にはミスター鳩山は民主党代表で、日曜日に行われる選挙で勝利する可能性が高いと紹介されといる。またこの論文の「ロンガーバージョン」(全文)は日本の月刊誌「Voice」に掲載されているとの注釈がついている。

 93日の読売はVoice編集部によると英語要約版の掲載の許可を求めてきたのは「ロサンゼルスタイムス」だけで、他のメディアからは来ていないと報じた。暗にニューヨーク・タイムスの記事は無断掲載ではないかとほのめかしているが、97日付の毎日新聞によると「トリビューンメディアサービス」はロサンゼルスタイムスも傘下に持っていることから、(日本側に)誤解が生じたようだと伝えている。

 日本では、論文の一部しか使われていないと批判する向きがあるが、元の論文にあった「友愛」という政治哲学や祖父鳩山一郎の思い出などを割愛したことを責めるわけにはいかないだろう。日本でも日本に関連した部分だけを報じるのは日常茶飯のことではないかと私自身の体験から思う。私が読んだ範囲では外交政策の部分での省略はほとんどない。

 鳩山サイドは、このような形で記事が掲載され、国際的な反響があるとは想定していなかったのは事実のようだ。しかしこれからは鳩山"首相"の一挙手、一投足に世界の目が向けられるのだ。

 

 アメリカに伝わった内容は?

 ところでニューヨーク・タイムス電子版が記述した鳩山論文はさらに要約すればおおむね次のようなものだ。

日本はアメリカ主導の市場原理主義に翻弄された。その中で人間の尊厳が失われた。金融資本主義、市場原理主義に終止符を打ち、国民経済と国民生活を守ることが課題だ。

経済危機はアメリカスタンダードの自由主義経済に合わせるべきだという言う考えによってもたらされた。

日米安保は日本の礎石だが、同時に地域の経済協力と安全保障のため「東アジア共同体」の創設を目指す。

イラク戦争の失敗と金融危機でアメリカ主導のグローバリズムの時代は終わり、世界は多極化に移行する。中国は世界の主要経済国になる。アメリカと中国の間で、経済的独立を維持することが必要であり、そのために地域統合を促進する必要がある。

・・・・という部分で我々にとっては目新しいものではない。日本記者クラブでの会見などではこれ以上にきつい発言もあった。

 

あわてていないオバマ政権、民主党外交政策を熟知している

 選挙後の92日、ニューヨーク・タイムスの本誌は、アメリカの一部の外交専門家の間から「アフガニスタンや米軍再編などの問題で米国を支えてきた日本が離れるのではないかと鳩山代表の外交姿勢に懸念が高まっている」と改めて報じることで電子版記事をフォローした。また91日付のワシントンポストは「沖縄の米軍駐留については交渉の余地があるだろうが、北朝鮮の核問題を考えるとアメリカからの離脱はあまりにも危険だ」と論評を加えた。

 93日にはワシントンで日本関係の専門家、外交シンクタンク、政府関係者によるシンポジウムが開催され民主党の考える日米関係について論議が交わされている。キーワードは「懸念」だった。アメリカが経験する初めての日本の政権交代だから無理もない。

この論文をきっかけに日本の動向は久しぶりに国際政治の一つの焦点になった感じがある。鳩山論文が指摘することの多くは今や世界の常識となっている事柄であり、私は結果的に日本の外交政策が脚光を浴びたのはこの論文の功績だと思う。

何しろあの北朝鮮の国営放送が94日、ニューヨーク・タイムスの記事を引用し、鳩山論文を好意的に?紹介している。いわく(鳩山論文は)「イラク戦争の失敗と金融危機という悪結果によってアメリカ主導の世界化は終末を告げつつあると明らかにした」。

 

 こうした状況の中で、93日電話による鳩山、オバマ会談が開かれた。これは外務省を通さずにアメリカ大使館のルース大使が民主党に直接連絡して行われたものだ。大統領は「海を挟んだ両国で民主党が勝利した」ことに祝意を表明した。また鳩山代表は「オバマ大統領は日本にもチェンジに勇気を与えてくれた。未来志向の日米関係を築きたい。気候変動や核廃絶でも同じ考えだ、経済でも緊密に連絡を取り合いたい、日米同盟は基軸だと思っている」と述べた。

 実はオバマ政権はこれまでにも、幾度となく外交専門家を日本に派遣し、民主党の鳩山代表、岡田幹事長、菅代表代行、前原副代表などの首脳部と直接会談している。ヒラリー・クリントン国務長官も小沢一郎元代表と会った。オバマ政権はすでに民主党の対米政策を熟知しているとみるべきだろう。

 

 新しい日米関係の成熟には時間が必要だ

マニフェストでは民主党は緊密で対等な日米関係、普天間基地の移設などの合意の見直し、地位協定の改定、インド洋の給油活動の停止などを主張している。このほかにも最近浮上した、核持ち込みについての密約もの問題にも関心を示している。

 こうた中で最近民主党に接触した重要な専門家は4人に上る、ジョセフ・ナイ(元国務次官補)、ジョン・ハレム(元国防副長官)、ジェームス・ケリー(元国務次官補)、マイケル・グリーン(元国家安全保障会議アジア部長)らだ。

 この4人の共通認識は、鳩山内閣の姿勢がアメリカ国内で反発をうける可能性があるものとみている点だ。しかし長期的に問題を注視し、日米双方の努力が必要だという点でも一致している。

 彼らの助言は直接オバマ大統領に届いている。オバマ大統領は多くの点で鳩山代表、次期総理と共通の基本的国際認識を持っている。しかし給油ではアメリカ政府は活動の継続を望んでいる。日本、アジアにおける米軍再編、普天間基地の移転問題などの合意などについて民主党の政策を容易には飲めないことも事実だ。

 双方が忍耐強く交渉を繰り返す必要があるという点では両政権の間で合意があると私は思う。

 選挙戦の中で鳩山代表は、普天間の移転問題、インド洋の給油などで強い姿勢を示している。これは、沖縄県民の強い要求を背景にしているからだ。このほか最近浮上してきた問題に、核配備の日本持ち込みについての密約問題もある。

アメリカとの対等な関係を築くことに成功するのか、あるいは腰砕けとなるのかを国民は注視している。同時に核廃絶、環境問題、経済での日米の協力協調を日本の国民は強く望んでいる。

 しばらくの間、国民もまた忍耐強く日米両方の新しい政権の動きを見守る必要があるだろう。

posted by media watcher at 01:00| Comment(1) | 隅井孝雄のメディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
アメ公の工作員らしいわ。
正体はばれてるぜ。
Posted by 売国成敗 at 2009年09月13日 20:55
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