2009.9.7
これは「ジャーナリスト」第617号、8月25日付けに記載された「リレー時評、戦争関連番組に見る制作者の思い」を加筆して採録したものです。
八月のテレビを見る
かつてない敗戦特集、核特集
夏休みに入って少し時間ができたので、思いっきりテレビ見た。折から8月6日の広島原爆記念日、8月9日長崎原爆記念日、8月15日敗戦の日と重なったため、特集ドラマやドキュメンタリーが目白押し。そして日本が引き起こした戦争について、日本の未来についてじっくりと考える時を過ごした。
ほぼ2週間にわたって私が見た第二次大戦や核関連番組は実に18本、のべ30時間時間に達した。我ながらよく見たものだと思う。私は放送批評懇談会の番組選奨委員をしているので半ば義務もあるが、自分自身の戦後の記憶総決算という意味もあった。
NHKはドラマ「気骨の判決」ドキュメンタリー「ヒロシマ、少女たちの日記帳」、「核兵器のない世界を目指して」、「渡辺謙アメリカを行く」、討論番組「日本のこれから」など力作、大作を揃えたが、民放でも「最後の赤紙配達人」(TBS)、「戦場のラブレター」(日テレ)、「僕の父はB級戦犯だった」(テレ朝)など7本を数えた。
時間との闘い、オバマ効果
今年は戦後64年。テレビの場合50年とか60年とか切りのいい周年に力を入れることが多い。そういう習慣から見ると今年は、ナチのポーランド侵攻70年という以外にはいかにも半端な年なのに、なぜ番組が多いのだろうか。私はいくつかの理由が複合していると考える。
戦争を知る世代が70歳を超え、時間との競争になっている。制作者たちは今しかない、という切迫した思いにかられているのではないか。
アメリカのオバマ発言の影響もあると思う。彼は初めて核兵器を使用した唯一の国としての責任について語り、核廃絶を目標にすると言及した。もはや核は抑止力ではなくなった。それどころか北朝鮮やイランの状況を見ても人類にとって危険な存在だ、とキシンジャーなど元国務長官、元国防長官クラスの要人も廃絶を指向している。核兵器廃絶の運動は今年以降かつてない高揚期に入る。その状況は報道番組の制作者にも反映しているのではないか。またイラクやアフガニスタンの現状を知るにつけ、戦争で武力では何も解決しないという考えも広がっていることが背景にある。
歴史と向かい合う制作現場
民放では日本テレビ系の「NNNドキュメント」や毎日放送の「映像09」などが格差社会に切り込んで注目を浴びたことから活性化し、積極的な報道活動を続けている。2008年秋からは民放の番組編成でかつてなかったほどプライムタイムの報道番組が増えた。
私の知る範囲ではNHKの放送現場は歴史に正面から向かい合おうとしている。試行錯誤はあるようだが、NHKスペシャルなどで、朝鮮併合、中国への侵略など日本の近、現代史がしばらく続く。番組と連動して「戦争証言」を集めアーカイブ化するプロジェクトもNHKが8月13日からはじめた。
NHKや民放の番組のあり方についての批判の声が多い。もちろん批判すべき経営姿勢、番組内容が多々あることを否定するものではない、しかしさまざまな番組を見続けている私としては、放送番組を制作している現場と、市民社会をつなぐかけ橋をどのように構築するか、ということを常に考える。
テレビはインターネットが発達した現在でも非常に大きな視聴者を持っている。テレビに見入っている人の数や人々の視聴時間はこの10年ほとんど変わっていない。依然としてテレビは重要なメディアだという認識が私にはある。

