2009年09月01日

衆議員選挙と出口調査

 隅井孝雄のメディアウオッチ No. 0911(通算182)
 2009.9.1

衆議員選挙と出口調査

 

開票零でも当確?

830日、選挙当日テレビ各社は投票が締め切られた午後8時、一斉に当選者予測数の政党比較を画面に映し出し、民主党の歴史的勝利だ、政権交代は確実だと伝えた。

これらの数字は、事前の選挙情勢分析調査に、当日の出口調査の数字を加味して各局がそれぞれ計算したものだ。この数字の基になったデーターがコンピューターで統計処理され、当選確実の根拠となる。どの局も午後8時丁度に予測結果を画面に出したいために、出口調査は午後6時で打ち切り、データー処理に回した。

NHKは番組の冒頭で次のように説明した。

4200ヵ所の投票所で49万を対象に出口調査を行い、74%に当たる368000人から回答を得た。この数字に、期日前投票での調査を含めた全国での情勢取材を加えた。そして当確はこれらの数字に、開票状況を加えて総合的に分析して決めていく」。

さらにNHKの開票速報番組ではこう続けた

「公式発表がなくても、開票率が低くても、優勢の見極めがつけば当確と報道する。また開票されなくても大差がつくことが確実だと判断できれば当確とする」

つまり開票の選管発表とは無関係にテレビが次々に当確を決めているわけだ。事実NHKが選管発表の開票の数字を画面に映し始めたのは午後1012分だが、その時点では、310議席に当確が出ていた。大阪10区の場合午後1017分に開票4%の数字が出たが各候補とも揃って200票であるのに、辻本清美候補に当確のマークがついている。その直後の画面では山口4区の安倍晋三候補は開票0%なのに当確のマークがついた。そして選挙事務所は万歳をして店じまいに入る。比較的当確を打つのが遅いNHKですらこのありさまだから、民放の方は推して知るべしだといえるだろう。私たちは3時間近く仮想現実を見続け、ようやく選管発表の数字が出始める頃には、すべてが終わったと考えて、テレビの前から離れる

私はこのような形での選挙報道の強い違和感を持つ

 

 アルバイトに頼る出口調査

 出口調査には大量のアルバイトが動員される。選挙当日7時からおおむね10時間前後の仕事で時給1000円以上、日給12,000円以上が相場だから、かなり条件が良い。ちなみに京都新聞は食事代込み、10時間勤務で13,000円だった。選挙当日以外事前に3時間程度の講習が行われる。なかなかの人気アルバイトで応募者が多い。

 今回の選挙ではNHKの場合300選挙区、4,200投票所に記入シートを手にした調査員が張り付いた。TBS7,200投票所、20万人が対象、テレ朝も7,000ヵ所54万人を対象にした。テレビ局に聞くと「訓練された調査員を派遣している」というが、要するに人材派遣会社に募集を頼み、研修を3時間程度こなした大量のアルバイト群が頼みの綱ということだ。

 有権者の動向調査としては貴重な資料になるが、開票当日の当確に使うのは問題があると私はおもう。

 

 元祖アメリカは慎重、ブッシュ・ゴア選挙がトラウマに

 出口調査はアメリカで1964年から始まった。日本では1989年から部分的に使われ始めたが、1992年の参院選でNHKと日本テレビが全選挙区で調査し、放送に反映させたのをきっかけに本格的利用が広がった。

 ところが現状ではアメリカは僅差の場合出口調査を倒閣に使わないなど日本より慎重な開票速報を行っている。昨年11月のアメリカ大統領選ではオバマの当確は午前零時を超えた。何といっても9年前、2000年の大統領選で、ブッシュ対ゴアの当確発表がもつれにもつれた経過がトラウマになっているからだ。

 この年、大統領選の投票数最終結果はブッシュ47.87%、ゴア49.38%(差1.41)だったが、ブッシュの当選となった。最後に競り合ったフロリダを「ブッシュがとった」ということで逆転したのだ。

 選挙当日、午後750NBCが出口調査をもとにフロリダでゴアが勝ったと報道したのがドラマの始まりだった。テレビネットワークは午後8時以降9時にかけて次々に次期大統領にゴア当確を打ちだした。ところが午後10時になってフロリダでのゴア当確をCNNなど各局が取り消し、さらに午前2時、ブッシュがフロリダを取って次期大統領という当確報道が出た。ところがその1時間後、票差が1800票しかないということから、当確は取り消しとなった。結局決着がつかず、票の数え直しをめぐって最高裁の審理にもつれ込んだ末、ブッシュ大統領が決まるという曲折をたどった。

 2004年の大統領選でも、最後の大票田オハイオ州で票差が少なかったことから、テレビ各局はブッシュの当確を翌日まで持ち越した。2%から3%程度の開きは誤差の範囲だとして、出口調査は使わない、優勢の判断はしないというのがアメリカのテレビの不文律となった。当確が午前零時が過ぎてからしか出なくなったのは、アメリカ国内の時差が5時間あることも反映している。

 

 テレビ各局、出口調査予測星取表

 下の表はテレビ各局が午後8時に出した議席予測の一覧表である。すべての局が民主党の獲得議席308よりも多めに出した。TBS、日テレ、テレ朝は320を超えている。反対に自民党の議席数は実際の119より少なくなっている。テレ朝の106が最高であとは100を割り込むという予測だった。調査の専門家によると、勝ち馬に投票した人はやや得意げになって、調査に積極的に協力するが、負けた側に投票した人は、出来れば調査は避けたいという心理状態になる傾向があるという。また少数政党を支持する人は自らの信条を少しでも多くの人に語りたい思いがあるから、積極的に調査に応じる度合いが高いとも言われている。確かに多くの局で公明、共産、社民の数字が結果より高く出ている。

 今回の予測一覧を見る限り、出口調査につきもののバイアスがあるのだと言えそうだ。

 NHKは上限と下限を出しているのでその中間値を見ると多局と比較できる。参考までに827日付の朝日新聞の予測を最後のコラムにつけ加えた。

 

テレビ各局議席予測

 

TBS

NHK

日テレ

テレ朝

フジ

最終結果

朝日

自民

97

84-131

96

106

97

119

103

民主

321

298-329

324

321

315

308

321

公明

20

12-36

23

22

23

21

24

共産

12

7-18

10

12

12

9

9

社民

11

4-15

8

7

10

7

9

国民

3-6

4

3

4

3

3

朝日は827日、他は830日、日本、大地、みんな、改革、諸派、無所属は省略した。

  
posted by media watcher at 10:23| Comment(0) | 隅井孝雄のメディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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