「シーシェパード体当たり」ニュースに思う
NHKはカッコつき国益優先ではなく、まっとうな客観報道を
毎年のことだが、今年も南極近くで日本の調査捕鯨船と環境団体、シーシェパードの追跡船との間でトラブルが発生している。
2月6日のNHKニュース7は「また妨害活動」とタイトルをつけて次のように報道した。
「アメリカの環境保護団体シーシェパードがまた妨害活動です。水産庁に入った連絡によりますと、南極海で調査捕鯨をおこなっている日本の調査船に今日の午前と午後合わせて3回接触しました。乗組員にけがはなく、航行に影響はないということですが、水産庁では許されることではないとして強く抗議しました」。
同じニュースを伝えたフラン2(NHKのBSニュースで放送)では次のように述べた。
「南氷洋の日本の捕鯨船に、環境保護団体の船が体当たりしました。日本は科学調査と称する捕鯨活動をやめようとはしていません。そのため複数の環境保護団体が怒りをあらわにしています。騎兵隊の衝突のような南氷洋の真ん中での船舶の体当たり、激しい衝突です。環境団体の黒い船が日本の捕鯨船に体当たりしました。その結果日本船の銛や船体が損傷、環境団体側には2人の軽傷者が出ています。このような追跡劇は毎年続けられています。五年前から環境保護団体シーシェパードが日本の捕鯨船を追っています。威嚇、妨害、ときには危険な行為ギリギリのこともあります。世界中で営業捕鯨は22年前から禁止されていますが、例外として科学目的の調査捕鯨は許可されています。その口実を毎年利用して日本は約千頭のクジラをとらえています。そのほとんどが食用として食べられています」。
NHKは「シーシェパードの体当たり」をフラッシュニュースとして伝えているが、これは水産庁の発表をうのみにしたものだ。結果として「過激派の襲撃は容認できない」という世論形成に一役買うことにはならないか。
シーシェパードはその後燃料が尽きたこと、世界中に報道されて抗議の目的を達したとして追跡を中止し、オーストラリアの母港に戻ったが、オーストラリア警察の捜査を受けているという報道もある。
なぜ国際的にこのような日本の捕鯨に対する抗議の波が起きているのか十分報道されているとは言い難い。フランス2の報道では、科学調査は口実で、千頭のクジラを食用に回されているとしている。
昨年、調査船の乗組員が捕鯨船上で食肉加工された鯨肉をお土産に横流ししたという報道もあったが、確かに南極の鯨が市場に出ているのは事実だ。大洋漁業など民間の水産会社はとっくの昔に捕鯨と鯨肉販売から手を引いている。
市場に出ている鯨肉は国の外郭団体、財団法人鯨類研究所が販売しているものだ。以前は売り上げが年間70億円に達したこともあるが、現在は市場が低迷、50億円を下回り、調査費用がまかなえない。それどころか国からの融資金の返済が滞るなど、赤字が膨らんでいる。
2月2日には国際捕鯨委員会の作業部会が、日本が南極捕鯨から段階的に撤退すれば、近海での捕鯨を認めるという報告書を出した。日本側でもこの新提案を真剣に検討して打開策を見つけようという動きがある。 捕鯨を取り巻くさまざまな状況をひとつのニュースですべて報道しなければならないというわけではないが、「またシーシェパードの過激行動が安全航行を脅かした」とだけ伝えていればいい状況ではない。
NHKのニュースが往々にして「国益ニュース」として批判されているだけに、短いニュースとはいえ、捕鯨船体当たりニュースの国際的背景に一言、言及すべきだったと私は思う。
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記事の内容を読んだら、”鵜呑みしている”のはあなただと思いました。