2009年02月09日

オバマ政権、全面デジタル化延期、果たして日本はどうする

 隅井孝雄のメディアウオッチ No. 0901(通算172)
 2009.2.9 


 オバマ政権、全面デジタル化延期、果たして日本はどうする

クーポン予算無くなり、チューナー生産も追いつかず・・・。

オバマ新政権のデジタル移行日延期提案について激論を戦わしていたアメリカ議会は、23日下院が264158でアナログ延期を決めた。この結果217日が期限だったアナログ電波停止は612日まで、ほぼ4カ月延期されることとなった。

アメリカのテレビ世帯は11400万世帯だが、調査会社ニールセンによるとその6.8%,

775千世帯が依然としてデジタルテレビを持っていないという。アナログ電波が切れれば直ちにデジタル難民になる。

 政権移行を進めていたオバマチームはすでに1月の初め、移行延期を勧告する手紙を議会に送っていたが、政権が発足すると直ちに延期法案を上程した。

上院は賛成多数となったが下院は紛糾し一度は否決した後再投票で議決したものである。反対の強かった共和党からは23人が賛成に回ったが、与党民主党では10人が延期に反対した。

アメリカではテレビ視聴者の70%がケーブルあるいは衛星経由で地上波を見ている。そのため、ケーブル/衛星会社が契約世帯のセット・トップ・ボックスを取り換えればデジタル受信に切り替えられるため、デジタル転換は比較的簡単だと思われていた。

政府は貧困世帯や高齢者世帯が多いアンテナによる地上波視聴世帯に40ドルのクーポンを配布し、チューナーの購入を呼び掛けた。そのためにアナログ波オークションで国庫に入る財政の中から154000万jを計上した。

ところが折からの経済危機も手伝って、クーポンの申し込みが殺到、予算が尽きてしまうという事態になった。その上チューナーの生産も間に合わず、もし217日にデジタル移行を強行すると300万人以上が取り残されることも明らかになった。131日現在での

ウエイティングリストは260万件あると報告されている。

 テレビ局がオバマ提案に強く反対しなかったのは、最終案で、アナログ停波は217日から612日までの間に行うとして、問題がないと思われる地域の局が前倒しできるようにしたからである。

 

 ウイルミントン、ハワイでは前倒し実施

 アメリカではデジタル化の移行は慎重に行われていたため、土壇場になってこのような事態になるとはだれも考えなかった。

 最初に手をつけたのは20083月、ケーブルの再送信デジタル変換義務を2009年から3年間延長した。ケーブルに加入していればデジタルテレビを買わなくても2011年まではアナログのままテレビを視聴できるというわけである。20089月、アナログ放送を中止しても問題が起きないかどうかノースカロライナ州ウイルミントンで先行実験を行った。
 事前に周知を徹底した結果、地上波受信
15000世帯のうち知らなかったのが23世帯、受信がうまくいかなかったのか178件にとどまった。関係者がその日のうちに問題世帯に急行、デジタル機器等を手当てして事なきを得た。

 続いて2009115日にはハワイで全面切り替えが実施された。ハワイのテレビ世帯はおよそ45万世帯だが、ケーブルや衛星の視聴が多く、地上波をアンテナ受信していたのはその7%、23000戸に過ぎなかった。切り替え時点で、チューナーが買えなかった、うまくつなげないなどの苦情がコールセンターに数多く寄せられはしたものの、大きな混乱もなく乗り切ったと伝えられる。ちなみにハワイではマウイ島などにいる絶滅種のミズナギドリ(ペトレル)が生息しているのだが、産卵が2月であるため、アンテナ工事などを1月に繰り上げる必要があったといわれる。

 こうした準備にも関わらず、チューナーの製造が間に合わず、クーポン予算も涸渇したことから大問題となったものである。貧困世帯への生活支援などを柱とするオバマ政権は極めて迅速な対応を見せたといえる。

 

 日本の場合、デジタル普及はまだ35%、共聴世帯など難問山積

 ところで2年後の2011724日にアナログ放送を停止することが決まっている日本はどうだろうか。

 民放連の調査によれば、デジタルテレビを所有している世帯は、テレビ世帯の44.3%に達しているものの、実際にデジタルテレビを視聴している世帯は34.8%に止まっている。(20086)

 日本はアメリカと異なり、ケーブル世帯は40%、2000万世帯に止まっている。また山岳地帯に囲まれているため、デジタル化のために12000局もの中継局を建設しなければならず、そのためには山奥まで分け入る必要があった。

 20091月の段階でアナログ共聴に頼る世帯のうち山間地2万施設、1500万戸、都市集合住宅5万施設650 万戸の移行が難しく、一挙にデジタル難民に陥る可能性がある。特に都市部の老朽化した民間アパート、マンションなどの集合住宅はアンテナの管理者を特定することも難しい。

政府と民放、NHKは衛星の空きチャンネルを利用してデジタル電波を空から送信することで乗り切りたい計画だが、それでは地元ローカル番組の受信ができないという大問題が残る。

 また政府は生活保護世帯、NHK受信料免除世帯などおよそ200万世帯にデジタルチューナーを無料配布するというが、生活保護を受給している世帯は限られており、生活保護水準以下の暮らしをしている人は400万人、年収200万円以下は1000万人以上いる。現在の経済情勢、派遣打ち切りなどでその数は急増しているのが現実だ。

 東京では東京タワーから向島のスカイツリーへの切り替えが2012年春に予定されていることも、事態を複雑化している原因の一つである。いったんデジタルに切り替えても1年後には再調整が必要であり、そのため新たな難視聴世帯が生まれることが予想される。高層ビルの林立する都心部ではアンテナ共聴多いこともあり、2度手間の転換がうまくいく保証はない。

 日本人の生活にとってテレビはガス、水道、電気、電話と同じライフラインとしての性格を持つ。今からでも遅くはない、政府、NHK、民放そして電機メーカーはデジタル計画を見直し、実現可能な計画を真剣に追求する必要があるだろう。

posted by media watcher at 16:12| Comment(0) | 隅井孝雄のメディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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