インターネットとアメリカ大統領選挙
序盤戦ではYouTube選挙といわれた
今回の大統領選挙は2007年1月20日、ヒラリー・クリントンがインターネット上で大統領選立候補を表明するといった予想外の出来事から始まった。出馬することは早くからわかっていたため通常のやり方ではインパクトがないと考えたヒラリーは、週末の土曜日にインターネット発表という戦術に出たものと見られる。このため日曜に編成されているネットワークの政治討論番組の話題を独占することとなった。そして22日月曜日は一日中メディア出演、夕方にはインターネットによる有権者と直接対話を行った。 大統領選挙の序盤戦の時期、メディアは一斉に今回の選挙がインターネット選挙になるとしきりに報道した。
このような見方に呼応するように、YouTubeが大統領選に参入した。2007年1月23日の民主党候補テレビ討論でCNNが動画の投稿を募り、一般の市民が候補者に直接質問する場面を演出したのだ。投稿は3000本集まり雪だるまの動画が環境問題を問うシーンなどもあってYouTube選挙として話題をまいた。
しかしCNNが投稿を事前にセレクトしたことにYouTube 愛好家たちは不満だった。CNNはYouTubeをわかっていない、インターネット上で一般の人々の人気投票にかければ市民が最もぶつけたい質問のランク付けがいとも簡単にできる、という批判だった。
CNNとYouTubeはその後共和党候補による同じスタイルのYouTube討論会も行ったが、この二回だけで終わった。
新しく登場したバラク・オバマ候補も、初戦からインターネット上で話題をまいた。2007年6月、YouTubeに投稿された「オバマガール」が大ブレークしたからである。オバマを支持する広告関係者が投稿したこのビデオは、オバマガールを自称する若い女性(ミス・エッティンガー)が「オバマに一目ぼれ」(I got a crash on Obama)と歌う。大人気となり2か月で400万回も視聴されるという記録を打ち立て、オバマブームのきっかけになった。
その後次ぐ次に新しいヴァージョンが制作され、2008年11月までに7000万回もの視聴回数を記録したとロイター通信が伝えている。しかし選挙が本格化して以降は、候補の政策、大統領としての資質、人物像を本格的に伝えたのは新聞とテレビという基幹メディアであった。
オバマガールのビデオクリップ
http://www.youtube.com/watch?v=wKsoXHYICqU
インターネット利用者の39%は候補者のスピーチを映像や活字で、フィルターを通さずに見たことがあると答えている。若者の33%はフェイスブックやマイスペースなどのソーシャルネットワークを通じて大統領選に関する情報を入手、さらに友人、知人同士のコミュニケーションを行った。
オバマ候補は7億5000万ドルといわれる選挙資金のほぼ40%をインターネット上からの小口献金を集めたことが明らかになっている。
インターネットでは候補者や政治家たちの行動や発言が即座に映像で投稿されるため、それが候補者の行動や発言への監視機能の役割を持ったことが指摘される。また大きな政治集会、演説会はテレビで中継されると同時にインターネット上でも視聴が可能であるため、メディアの選挙報道を補完する役割を果たした。
しかしインターネットは今回の選挙の最大の特徴として、市民の行動のツールとしてその活躍の場を大きく広げたことが特筆されるだろう。 一般市民がブログを開き、自らの意見を書き込み、ソーシャルネットワークで自由に意見を交換し、誘いあう。郵便番号をクリックすれば身近にある集会がわかる。
ABCテレビによればソーシャルネットワークで発言し、行動に参加した若者の数は、フェイスブックでオバマ130万人、マケイン20万人、マイスペースではオバマ50万人、マケイン6.3万だったという。また無数にあるオバマ応援投稿サイトには8800万回のアクセスがあり、2300万回だったマケイン応援サイトへのアクセスの4倍に達したという数字もある。YouTubeに登場した応援ビデオはオバマ1800本、マケイン350本だともいう。オバマの勝利はこうしたところにもくっきりと現われている。
オンラインビデオ、ビデオ投稿サイト、SNSなど新しいインターネット上の仕組みが、人々の政治参加とりわけ若者の政治参加に道をつけた、というのが今回の選挙の特徴だったといえるだろう。
テレビや新聞などのメディアは選挙の、候補者の濃密な情報を、巨大な大衆に発信した。一方インターネットは情報を受け取った市民たちの政治的な行動の武器となったということができよう。
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