2009.10. 30
変るか韓国メディア地図、新聞社、大企業が放送参入へ
韓国でメディア関連新法発効
11月1日から韓国の憲法裁判所は10月29日、「韓国議会におけるメディア関連法の採決は有効」との判断を下した。メディア法は新聞産業や大企業の放送参入などを認めることによって、デジタルメディア時代の新しい発展に備えるという目的で韓国政府と与党ハンナラ党が提出した。しかし韓国民主党など野党勢力の反対で審議は紛糾、7月22日罵声と怒号が飛び交う中、強行採決された。野党は議場にいなかった議員が採決に加わっているなど、実際には過半数に達していない、として採決無効の仮処分を憲法裁判所に申し立てていたものである。野党は「政治的判決だ」と反発しているが、新しいメディア法は11月1日発効する。
今回の改正の対象は「新聞法」、「放送法」、「マルチメディア法」(IPTV法)などメディア関連三法である。その骨子は新聞とニュース通信社の兼営禁止条項を廃止する、これまで禁止されていた新聞社および大手企業の資本参加を認める、というものである。資本参加の場合の上限は地上波10%、ケーブル、30%、インターネット49%としている。
かつて1980年軍事独裁政権のもとでのメディアの統合で民放の東亜放送、東洋放送が廃局、それ以来KBS(韓国放送公社)とMBC二局となった。その後1991年に民放としてSBS(ソウル)など12の地域放送が生れた。MBS(文化放送)は広告を財源とする株式会社だが、その株式の70%は放送文化振興会(政府の外郭公社)が所有している。1990年EBS(教育放送公社)がKBSから分離した。事実上公共放送システムを中心とする寡占化体制が続いているといえよう。
メディアコンテンツの多様化目指すイミョンパク政権
イミョンパク政権は「2012年の完全デジタル化に備えるため、地上波、ケーブル、インターネットの規正を緩和する」としている。それによって「新聞、放送など韓国メディアのグローバルな競争力を高め、メディアコンテンツの多様化を促進する」のだという。またこうした改革で「メディアが活性化し、多様化すれば、若者に人気のあるメディア産業の雇用も増える」という。
放送事情にくわしいジャーナリスト、アンミョンヒさんは「大企業は地上波に出る機会を窺がっている。しかし韓国ではインターネット、ケーブル、衛星、衛星モバイルで多様なサービスがあり、テレビ局を増やす意味はあまりない」と疑問を呈する。
こうした状況に対して市民の側に強い反発がおきた。インターネット上には政府与党批判の書き込みがあふれ、韓国言論労組や民主言論運動市民連合などが、MBSなどの放送局やの支援を受けて大規模な抗議集会を開き、またKBSのプロデューサー、アナウンサーも一部参加するストライキも行なわれた。
市民側の動向にくわしい尚志大学のキムキョンハン教授は「この動きに対して野党、言論労組を中心に地域メディア発展法を準備している」と語る。市民に身近な地域放送の新しい制度を創設することで対抗しようとする長期戦略が検討されているのだ。
「メディアビッグバン」を歓迎する韓国新聞業界
韓国ではメディアの中で新聞の信頼度、接触率低下が著しいが、テレビの信頼度、接触率は極め高い。韓国言論財団の報道信頼度調査によると新聞の信頼度は1998年にテレビに追い抜かれて以来激減し、2008年には新聞16.0%、テレビ60.7%と大きく差が開いた。インターネットも新聞を追い抜き20%に達している。
韓国メディア信頼度 2008 韓国言論財団
1998 | 2000 | 2002 | 2004 | 2006 | 2008 | |
新聞 | 40.8 | 24.3 | 19.9 | 16.1 | 16.5 | 16.0 |
テレビ | 49.3 | 61.9 | 48.4 | 62.2 | 66.6 | 60.7 |
ラジオ | 7.3 | 2.5 | 4.3 | 4.4 | 1.4 | 2.7 |
雑誌 | 1.8 | 0.4 | 0.8 | 0.3 | 0.8 | 0.4 |
ネット | # | 10.8 | 8.5 | 16.3 | 12.8 | 20.0 |
新聞産業は今回のメディア法改正を「メディアビッグバン時代が来た」として、大いに歓迎している。「新聞と放送兼営、複数のケーブル総合チャンネルなどの許容でデジタル時代に向けてメディア産業構造を変化させるきっかけが出来た。現在の様な地上波の放送市場独占は維持できないだろう。新しいメディア技術の発展にあわせるという点で、今度のメディア関連法改定の意義を見出すことが出来ると思う」と韓国言論学界キムヨンギ会長(漢陽大学教授)はいう(2009.9.14中央日報電子版)。新聞業界と政府の目指す‘未来戦略’が極めて端的に読み取れる発言である。
東亜日報、朝鮮日報、中央日報の三大紙にとってはまさに起死回生の法改正だが、どのような形で参入するかはまだ見えていない。

